EXHIBITIONS

"Identity XVI - My Home? –" curated by Kenichi Kondo

2020.08.21 - 09.26

リム・ソクチャンリナ National Road Number 5 2015 © Lim Sokchanlina Courtesy of nca | nichido contemporary art

ターレク・アル・グセイン Al Sawaber 3052 2015-2016 © Image Courtesy of The Artist and The Third Line, Dubai

キュンチョメ ウソをつくっている絵#3 2016 © Kyun-Chome

 ゲストキュレーターを招き、様々な視点から「Identity」というテーマを考察するnichido contemporary artのシリーズ企画。今年は、森美術館シニア・キュレーターの近藤健一を迎えて開催する。

 近藤は2003年より森美術館に勤務し、同館での企画・共同企画に、「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」(2008)、「六本木クロッシング2010展」、「アラブ・エクスプレス展」(2012)、「カタストロフと美術のちから展」(2018)、「未来と芸術展」(2019)など。10年にはローマのサラ・ウノで若手日本人のビデオ・アート展を企画。14〜15年までベルリン国立博物館群ハンブルガー・バーンホフ現代美術館客員研究員を務める。

 本展には、ターレク・アル・グセイン、岩井優、金城徹、キュンチョメ、リム・ソクチャンリナ、バスィール・マフムード、村上慧の作家7名が参加。「Home」をキーワードに、新型コロナウイルスによって「家」に対するとらえ方が変化しているいま、その意味を再考する。

 ターレク・アル・グセインは、中東クウェート・シティの公営集合住宅を主題とした写真シリーズ「アル・サワバー」を発表。当初はランドマークであった建物が老朽化し、政府によって取り壊されたアパート内部の写真は、かつての住民の様々な生活の断片が多様な物語を思い起こさせる。
 
 岩井優は台湾滞在中に、現地の古い日本式住宅を舞台として制作した映像作品《フラッグ・クリーニング》(2010)を公開。金城徹は自身の故郷・沖縄でフェンスが米軍基地を象徴するいっぽう、その土地の人々にとっては日常の一部であることに目を向け、透明なフェンスの網に蝶や花を並置した立体作品の連作「あなたのたつところ」より新作を発表する。

 キュンチョメは、福島の仮設住宅に住む帰還困難区域の元住人に、故郷へと続く道を封鎖するバリケードや放射性廃棄物の入った袋をPhotoshopで消してもらい、映像作品《ウソをつくった話》(2015)を展示。リム・ソクチャンリナは、カンボジア・プノンペンからタイ国境まで続く国道5号線の拡張のために、一部を解体された沿道の住宅を撮影した写真シリーズ「国道5号線」(2015)を発表する。

 バスィール・マフムードは茨城県・小貝川の川辺で人々が大きな木製の構造物を運ぶ姿をとらえた映像作品《移動-より良い方へ》(2012)を公開。詩的な趣を持つ映像の背景には、作家の故郷であるパキスタンで、21人がヨーロッパに密入国しようと船で移動中にコンテナの中で死亡する事件がある。マフムードは、故郷を捨てより良い場所へ移動する人々の思いをこの映像に重ね合わせる。

 そして村上慧は、2014年から自作の発泡スチロールの家を移動し、他人の敷地に家を置かせてもらい、そのなかで寝泊まりするプロジェクト「移住を生活する」を行う。自分の家に住みながら移住を繰り返す同プロジェクトは、私たちに家の定義の再考を迫り、移民やホームレスの問題について問いを投げかける。