EXHIBITIONS

三上誠とパンリアル

2020.07.13 - 08.05

三上誠 機構の整理 窓 1970

三上誠 経絡歴 1968頃

三上誠 作品 1960頃

 関西で活躍し、近年その活動が再評価されている美術家・三上誠の展覧会が開催される。

 三上は1919年大阪府生まれ。京都市立絵画専門学校で日本画を学びながらも、伝統的な日本画表現にとどまることなく、つねに新しい理想を求め続けた作家だ。強烈な敗戦体験と、既成の秩序を重んじ固定観念で構成された日本画壇への反発が、その原動力となっていた。

 その三上の姿勢に共感した作家たちにより48年に結成されたのが芸術グループ「パンリアル」である。パンリアルの「パン」は「汎」、「リアル」は「リアリズム」の意味。狭義のリアリズムではなく、具象、抽象、日本画、洋画をも包括する広範な表現や内容を期待して、三上によって名づけられた。三上はパンリアルの中心的な存在として研究・制作を行い、パンリアルの思想を具現化し、独自の芸術世界を築き上げていった。

 精力的に作品を発表するいっぽう、三上は長く肺結核との闘いに苦しめられ、しかし72年に52歳で逝去するまで、手術や入院を繰り返しながらも不屈の精神で第一線に立ち続けた。

 療養中はもっぱら灸に関心を持ち、人体経絡図と抽象図形を組み合わせた独特な表現を取得。長い闘病生活のなかで、つねに自身の肉体的苦痛と対峙しながら、東洋医学、暦法、仏教の輪廻転生などへの造詣を深めていったことは作品からうかがうことができる。

 本展では三上の作品約20点を展示予定。因襲に満ちた日本画壇からの脱却、肉体的苦痛からの解放を求め、つねに自由で未知の世界を探求し続けた三上は、ウイルスとともに生きるこれからの生活や、変動の激しい経済など、新しい世界へ突入した私たちにとって、いま必要な作家と言えるだろう。