中矢 篤志｜虹のミスト　灰色のカサブタ

　中矢篤志は1977年愛知県生まれ、2003年金沢美術工芸大学大学院修了。初期の作品では、スタイロフォームを使って厚みを持たせ支持体に円形や矩形のキャンバス地を張り、うさぎを擬人化したキャラクターを登場させるなど、可愛さとグロテスクな世界を色彩感豊かに同居させた、物語性のある作品を発表した。

　しかし東日本大震災で大きな衝撃を受け、作風が変化。背景を黒で塗りつぶすことで濁流のイメージと重ね合わせつつも、子供たちへ希望を託すように、虹色の茫漠とした少女をモチーフに描くようになった。技法も含めて希望へと転化しようとする意識が実り、今年の「FACE 展 2019 損保ジャパン日本興亜美術賞展」読売新聞社賞を受賞した。

　本展では、「画面をかきむしるように鉛筆を走らせ、紙を千切って画面に貼る」と語る、新作《灰色のカサブタ》などを発表する。