EXHIBITIONS

開廊記念展

梅津庸一展 ありえたかもしれない正解への遡行

Ishikawa, Ishikawa
2026.10.30 - 11.30
 石川県金沢市の新たなギャラリー「Ishikawa, Ishikawa」の開廊を記念した展覧会「梅津庸一展 ありえたかもしれない正解への遡行」が開催されている。会期は11月30日まで。

 梅津庸一は1982年山形県生まれ。美術家、パープルーム主宰。以下、梅津による展覧会ステートメントとなる。

「『もしもあの時こうしていたら』。誰もが一度は思ったことがあるはずだ。僕はわりと頻繁にそうした後悔が脳裏をかすめる。もっとも、そんなことを考えても過去に戻ることなどできないのだが。

 では、作品の場合はどうだろう。『あの時こうしていれば』という後悔を抱えた作品は案外少ない。完成した作品とは、制作当時の逡巡と決断の総和であり、終わり方は作者自身が決めるものだ。また、そもそも作者にとっての本当の意味での失敗作が世に出ることはない。とはいえ、制作において小さな思い残しは無数にある。ひとつの道筋を選ぶことは、ほかの分岐を潰す行為にほかならないからだ。

 だが、選ばれなかったルートが完全に途絶えるわけではない。作品がひとつのプロダクトとして完結しても、異なる作品で同じ課題を引き継ぎ、別の方法を試すことはできる。その意味で、作品制作とは、人生における『取り返しのつかなさ』を和らげる麻酔のような側面を持っている。また、作品は作者の生き写しでも所有物でもなく、ひとときをともに過ごした後は、それぞれ別の時間を生きていく。

 本展は、そうした作品に記された『ありえたかもしれない分岐点』へと遡行し、別の道を歩み直すような想像力を働かせて編まれる。通常、展覧会とは既存の展示室に作品を配置してつくられるが、今回は新しく開業するギャラリーということもあり、スペースができる前から構想を練る必要があった。いわば、普通の蔵がギャラリーに変容していく過程と歩調を合わせながら企画は進んでいった。作品を選定し、過去の分岐点を踏まえた新作も次々に加えられた結果、実際のスペースには収まりきらないほどの数の作品が用意された。

 本展では、主題、形式、様式、年代といった項目にもとづいた体系的な分類よりも、作品間をまたいで引き継がれてきた造形の因子の流れが優先される。それらを改めてつなぎ直すように再編する。わかりやすいキャッチコピーや主題に埋もれがちな『つくる』に潜む『開発と設計』の原理を提示したい。旬の社会問題やトピックを図解し啓蒙するのではなく、いま一度『美術の専門性とは何か』を身をもって考えたい」(展覧会ウェブサイトより)。