EXHIBITIONS

消えつつ 生まれつつ あるところ

イクヤマ家(ほか5会場)
2024.10.19 - 11.18

メインヴィジュアル

 石川県・金沢市で、空き家を枯死・休眠期の植物に見立て、次なる生のライフサイクルを想像する展覧会「消えつつ 生まれつつ あるところ」が開催される。

 本展覧会は、空き家の活用とコミュニティの活性化を目指すNPO法人「綴る」が主催し、金沢市・菊川の空き家群にある5軒の家屋(空き家、空き部屋、空き家を改築した家など)で開催。かつて足軽の居住エリアだった菊川は、敷地が狭く建替えが難しいなどの理由で郊外へ転居する世帯が多いため、いまなお空き家が増え続けている。いっぽうでこのエリアは、市中心部から徒歩20分圏内に位置し、藩政期からの長い歴史や物語をもつ。

「菊川の空き家群ー消えつつ生まれつつあるところー」では、アーティストやパフォーマーによる作品が展開され、人々は路地をそぞろ歩きしながら、展覧会を巡る。その拠点となる昭和後期に建てられた一軒家「イクヤマ家」では、道念邦子(1944〜)が「永遠に続くいま」を意味する常緑・朝鮮槇の葉をモチーフとしたインスタレーションを発表。

 イクヤマ家の向かい、戦前に建てられた一軒家「お向かいの家」では、佐藤弘隆(1993〜)がデジタル時代の死生観と倫理をテーマとしたメディア・インスタレーションを、033(1993〜)では羊の腸を素材に、チベット仏教にもとづく死生観をテーマとしたテキスタイル作品を展示する。イクヤマ家で滞在制作を行うマーガレット・ウィブマー(1959〜)は、ラブレターをモチーフに「愛」を探する参加型のパフォーマンス《Salon d` Amour》を行う。

 昭和後期の「K アパート」では、3つの空き部屋で3名の作品を展示する。田中和(1998〜)は空き部屋をそのまま作品とする仕掛けをつくり、中森あかね(1962〜)は室内で植物を育て、朽ちた部屋を聖なる空間へと変容させるインスタレーションを、ニック・ヴァンデルギーセン(1981〜)は能登を撮影した写真作品を発表する。

 昭和初期から住居兼店舗として使われていた「角の家」では、金沢を拠点とする創作ユニット、サブドキュメント(2021〜)が「のこされたもの」をモチーフに演劇を行う。そして、築100年以上の空き家を改築した「松本家」では、生い茂る草花のなかに終々とたたずむ不思議な少女(あるいは少年)や小動物を描いてきた下出和美(1983〜)による絵画作品、庭先を流れる韓月用水から着想を得た清水(1997〜)による参加型の作品が設置される。