髙畠依子「CAVE」

　シュウゴアーツは、ペインター・髙畠依子の個展「CAVE」を開催する。

　髙畠は1982年福岡県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程在籍中にアニ・アルバースの研究のためにアルバース財団でのレジデンスを経験。芸術やデザインなど多分野に渡る素材や色彩、ものの構造に対して常に意識的な制作を続けている。

　2016年以降、髙畠は森羅万象の循環のなかに絵画の生成過程をとらえ、「風」「水」「火」「磁力」といった自然の力を作品に取り込むようになった。アトリエで素材や技法の実験を重ね、観察に基づいて模型や仮説をつくり上げていく科学的な制作手法によって、絵具とキャンバスの関係を探求している。

　本展の制作にあたり、髙畠はさらに歩みを進め、地球の内奥に目を向けたという。「CAVE」と称された一連のシリーズは、2019年にラスコーや先史時代の洞窟壁画を求めて旅をした髙畠が、人類史上初の絵画が描かれた洞窟空間や鍾乳洞にインスピレーションを受けたことに始まる。

　髙畠はまた高松塚古墳を訪れた際、古墳に海水が流入した際の水の跡や岩石に含まれる金属が酸化して生まれた色彩に気づきを得た。本展では金属系天然顔料の黄土、ベンガラ、緑青を用いて、繰り返しキャンバスを液体に深く沈めて色彩の層をつくり出した作品群も展示する。