EXHIBITIONS

渡辺泰子「A MAP THEY COULD ALL UNDERSTAND.」

渡辺泰子 だまし舟(午前8時53分までの太陽光と太陽光の間での旅) 2022
© Yasuko Watanabe Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 ユミコチバアソシエイツでは、渡辺泰子の個展「A MAP THEY COULD ALL UNDERSTAND. 」を開催中。本展は、フェルト、紙、写真、映像などの複数のメディアを使い、活動を展開してきた渡辺の、同スペースでは初の個展となる。

 渡辺は1981年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油画コース修了。旅や地図を出発点として、境界や距離、移動や越境といった問題に関心を寄せ、身体的・物理的な次元と空間的・認識論的な次元が交錯する作品を手がけてきた。ごく単純な作品の現れをもちながら、複数のスケールが重層・拡張し、距離や方向の感覚がダイナミックに反転する渡辺の作品は、それ自体が「旅」の経験を結晶させたような、境界や場所の動的な揺らぎと空間的な越境可能性をたたえている。

 本展では、折り紙の「だまし舟」をモチーフにしたハンドメイドフェルトによる作品や、写真を素材とする作品などを発表。なお本展は、「五島記念文化賞美術新人賞」における成果発表展として、東急財団(旧・五島記念文化財団)より助成を受け実施される。

 さらに会期中、渡辺のこれまでの代表作を収録した同名のカタログ『A MAP THEY COULD ALL UNDERSTAND.』を刊行する。

「A MAP THEY COULD ALL UNDERSTAND.
本展は、白地図から出発した旅のその後の旅、だまし舟での旅、これからも出現し続けるであろう軌跡と行先を手繰り寄せる、地図をめぐる展示となっています。

五島記念文化賞美術新人賞の海外研修における帰国成果展としての今回の個展では、私がどんな旅をしてきたのか、そしてどんな地図を使用したのかをテーマに構成しています。
かつての2012年、私は、ルイス・キャロルのナンセンス小説、『スナーク狩り』に登場する地図ーーーそれは姿形も、どこにいるかもわからない怪物、スナークを探すためのものーーー、何も指し示さない、真っ白な白地図をつくりました。

その白地図を頼りにずっと旅を続けてきた私は、その後、海外研修の機会を得て、目的地としてアメリカとイギリスを選び、2018年から1年間5つのタイムゾーンを越えながらの新しい旅をしました」。(ステイトメントより、渡辺泰子)