EXHIBITIONS

小野久留美 個展「(E)closion」

rusu「ナオナカムラ」
2022.07.09 - 07.18

キービジュアル

小野久留美 Path 2021

小野久留美 Stigmata I 2020

 rusu「ナオ ナカムラ」では、小野久留美の個展「(E)closion」が開催される。

 小野は1995年栃木県生まれ。2019年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズのファイン・アート学部を卒業。在学中にアーティスト、アネット・メサジェへの作品提供を皮切りに、ロンドンのテート・モダンや、ソチのハイアットリージェンシーホテルでのグループ展に参加してきた。帰国後は東京と栃木を拠点に展覧会のみならずアートフェアへ出展するなど発表を続けている。

 小野の作品は、すべてのものは大地から生まれ大地へ還る万物流転である自然の摂理のなかで、成長や衰退の物理的な変化に逆らうように何かを永遠にとどめておきたいという人間の保存に対する欲望と、成長や衰退の物理的な変化にある無常の儚い美しさを、「写真を紙に印刷して土中に埋め、掘り起こす」という手法で可視化している。しかし、その制作過程にある土中での容態は直接的に目で確かめることができない。よって作家自身の経験をもとにその都度、季節や気候や土質によって掘り起こすタイミングをコントロールしている。土中に存在する自然の力により作品はつねに変化するため同じものは2つとなく、掘り起こすタイミングにズレが生じると作品は土中に還り、姿形を失う。

 紙も遡れば土中で長い歳月をかけて育てられた木が原料であり、埋めるという行為は埋葬と復活を想起させることから、土は命の根源とも言え、小野は「究極の保存とは大地に還すことなのではないか」と考えている。

 本展は作家にとって5度目の個展であり、ナオ ナカムラでは初めての個展となる。

 今回の展覧会タイトル「(E)closion(=羽化、孵化)」は、「内に閉じた状態から開かれた外に出現する」という語源から成り立っている。会場となるrusuも約80年の間プライベートに閉ざされた私宅であり、オルタナティブスペースとなり開かれた場へ、そしてこのあとまもなく事実上の取り壊しを迎え閉ざされるが、土地として再び外に開かれる予定だという。

 本展で小野は、会場の庭で育つ植物の記録、コロナ禍でのステイホーム時に終生育てた蚕の変態の記録、不特定の妊婦のお腹を接写した記録、そして、長期保存に不向きである感熱紙に印刷された子供のエコー(超音波)写真の記録をモチーフに制作した未発表作をメインに展示を構成する。