小谷くるみ「Ἥφαιστος（ヘーパイストス）」

　小谷くるみの個展「Ἥφαιστος（ヘーパイストス）」が、大阪のギャラリーノマルで開催される。

　小谷は1994年大阪府生まれ。2017年京都造形芸術大学油画コース卒業、19年京都造形芸術大学修士課程修了。独創的な作風で注目され、いまもっとも新作を期待される若手作家のひとりだ。ギャラリーノマルでは、2020年のグループ展「U30 - Whom do you suspect?」でデビューし、初個展となった昨年の「砂から星へ」も大盛況で終えた。

　小谷がこれまで一貫してテーマとしてきたのは、存在の痕跡と気配だ。かつてそこに存在していたが、いまは目に見えないものや、時間によって変わっていく物質の姿を画面にとどめた作風は、様々なイメージを掻き立てる。

　本展では、布地に貼った銀箔を燻液で硫化させることで描画した新シリーズを発表。本来自然が時間をかけて起こす現象を人工的に生成する表現手法を用いた、意欲的な構成となる。

　展覧会タイトルの「Ἥφαιστος」は、ギリシャ神話の創造の神「ヘーパイストス」からとったもの。つねに創造することの意味を問いながら、自身の表現哲学を独自の手法に反映させてきた小谷が、新たな空間をつくり上げる。