EXHIBITIONS

コムロタカヒロ「WILDERNESS」

2022.05.14 - 06.04

コムロタカヒロ Cobra Load 2022

 THE ANZAI GALLERYは、コムロタカヒロの個展「WILDERNESS」を開催している。

 コムロは1985年東京都生まれ。80年から90年代のアメコミ、アメリカンSFを題材にしたソフビ人形やアクションフィギュア玩具のモチーフを取り入れた彫刻作品を展開している。可動関節の演出やソフビを思わせるようなツヤの表現によって、子供向け玩具を拡大化したように見えるコムロによる等身大の立像たちは、鑑賞者の想像力を喚起させる。

 コムロの作家活動の原体験は、幼少期に親戚から「お下がり」としてもらった名前のないフィギュアたちを使い、ままごとのようにそれぞれのキャラクターを用いて遊んだ経験にあるという。どういった設定を持つのか、またどのような世界観を出身とするのかが不明なままのそれぞれの個性的なキャラクターたちを住人とし、自身の物語に迎え入れる遊びを体験した。その後、10代での宗教信仰を経て18歳の時に無宗教となったコムロは、幼少期の神話づくりのプロセスを自身のアイデンティティの拠り所にしたと語る。

 物語を持たない(知ることができない)キャラクターたちの居場所をつくり上げる遊びの延長で、「自分のための神話」をつくる。その原体験と内省的なプロセスの背景を踏まえると、コムロの作品一つひとつの丁寧に仕上げられた質感や、時には鑑賞者に迫るような作品の規模感から荘厳な崇高さを感じ取れるだろう。

 本展のタイトル「WILDERNESS」は、荒野や、手つかずの地という意味を持つ。また社会の対義語としても機能し、ファンタジー冒険RPGのフィールドをイメージしてつけられた。

「WILDERNESS」というタイトルは、鑑賞者に遊び(=プレイ)を求めると同時に、コムロの作品たちを社会のなかでの機能だけではなく、一人ひとりの想像する世界のなかで機能することを促す。そしてカラフルで時にユーモラスなコムロの作品群は、作家自身の神話から離れ、「お下がり」として鑑賞者の想像のなかで新たな意味性や物語を持つことになるだろう。