Vol.77 No.1106
2025年7月号 特集「岡﨑乾二郎」
造形作家の「起こし絵」をつくる
岡﨑乾二郎(1955-)は、1981年3月に個展「たてもののきもち」(村松画廊、東京)で「あかさかみつけ」シリーズを発表し、その日常的な素材からなる軽やかな表現で颯爽とシーンに現れます。以降、絵本、メディア・アート、環境設計、タイル制作、描画ロボットの開発、批評活動に至るまで、多岐にわたるメディウムをひとつのテーブルに載せながら、多くの仕事を達成してきました。
その後、企画監修した「抽象の力」展(豊田市美術館、2017)の開催、書籍『抽象の力』(亜紀書房、2018)の刊行が続き、2019年には同じく豊田市美術館で大規模回顧展「視覚のカイソウ」が行われると、作品と批評活動が不可分のものとして、その全貌を見渡す機会となり、国際的評価と存在感は高まっていきます。
そして2025年のいま、東京都現代美術館で「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」展(4月29日~7月21日)が開催されています。コロナ禍を経たこの間に、世界にも岡﨑自身にも大きな転回が起きました。2022年以降の新作群がずらっと並ぶ会場では、驚くべき造形の世界が展開されています。
本特集では、岡﨑の頭の中に折り畳まれている「彫刻の仕組み」「絵画の仕組み」「批評の仕組み」等について、第三者の視点も交えて解き明かしていくことで、この 造形作家の「起こし絵」を立体的に立ち上げてみたい。
アーティスト・インタビューは、現代の資本主義や新自由主義の欺瞞を、様々なメディアを用いて挑発的に暴く作品を発信・拡散するアートコレクティブMSCHF。東京での個展に際して、彼らの考える、芸術の定義、作品と製品の関係、イメージの拡散とその力学について、馬定延が話を聞いた。
