ART WIKI

サウンド・アート

Sound Art

 サウンドが表現の主体となったアートで、様々な目的、文脈で「音」が使用される領域越境的な表現方法。音楽、音響、電子芸術、メディア・アート、パフォーマンス、フィールド録音、環境芸術、彫刻、建築、映像、詩やその他の分野にまたがっている。美術史からの視点では、イタリア未来派の画家、作曲家、楽器製作者ルイジ・ルッソロが制作した複数の音響装置からなる「イントナルモリ」がその先駆として考えられる。これに続いて、ダダ、超現実主義、シチュアシオニスト・インターナショナル、フルクサスなどのアーティストたちがサウンドを表現に取り入れていった。さらにコンセプチュアル・アート、ミニマリズム、サイトスペシフィック・アート、言語表現のスポークン・ワードや詩の朗読、また実験演劇などでもサウンド・アートが見られる。

 デザインの観点から1960年代終わりに、カナダの作曲家R.マリー・シェーファーによって提唱された概念で、「音風景」を意味する「サウンドスケープ」とそのデザインも隣接する分野である。

 建築と音響、立体物と音響の分野では、構造物に自然や人工のサウンドの仕組みを取り入れている。建築家のル・コルビュジエやその弟子の作曲家、建築家であるヤニス・クセナキスのように、現代建築とサウンドの設計にもサウンド・アート的な思考が見られる。

 また音響技術としては、マルチチャンネル、三次元音響、バーチャル・リアリティ環境での音響のように、新しいテクノロジーを用いた聴覚のみならず、マルチ感覚へのアプローチもサウンド・アートの新分野を切り拓いている。

文=沖啓介

参考文献
アラン・リクト『サウンドアート ──音楽の向こう側、耳と目の間』(フィルムアート社、2010)
中川真『サウンドアートのトポス—アートマネジメントの記録から』(昭和堂、2007)