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インスタレーション

Installation Art

「インスタレーション・アート」として、1970年代に出現し、従来の絵画、立体作品とは異なり、新たに加わった20世紀後半以降の特徴的な表現方法となる。もともとは「設置」することを意味し、一時的な設置と恒久的な設置の両方があると考えられるが、多くの場合、展示期間を限って一時的に設置されるものである。同様な表現は、ダダイズムやシュルレアリスム、ポップアート、ミニマリズムあるいは日本の「具体美術協会」の表現にも見られたが、70年代に登場した新しい表現(例えば、ボディアート、ランドアート、イベント、パフォーマンス)のように、従来の表現方法と区別するものとして「インスタレーション・アート」という概念が形成される。イタリアの「アルテ・ポーヴェラ」や日本の「もの派」のような設置することの概念を問う表現や、アメリカのブルース・ナウマン、ヴィト・アコンチやドイツのヨーゼフ・ボイスのように、行為と組み合わせた表現傾向にも活かされている。

 キュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストは、評論『インスタレーションが答え。問いは何か?』(オックスフォード大学出版局、2001)で、インスタレーションは、「『オブジェクトフッド』の制約の拒絶である」と語っている。「オブジェクトフッド」とは、60年代後半に美術批評家のマイケル・フリードがミニマル・アートは「非─芸術」的であり、「演劇的」であり、置かれる状況に左右されると批判するのに用いた概念である。オブリストがこれを持ち出すのは、インスタレーションという表現のあり方を反証的に示すものである。

 インスタレーション・アートは従来、もっぱら設置する場所、環境、空間、状況などの特性や関係性を強調する傾向と、選ばれたものや材料にまつわる概念、歴史性、用法などの意味が取り上げる傾向が主要な位置を占めてきた。さらに映像、サウンドなども加わり、時間性や非物質性も付与され、現在では、「映像インスタレーション」「サウンド・インスタレーション」のような映像やサウンドの「装置」がインスタレーションの構成要素ともなっている。建築的な構造を持って屋内外の空間に設置される作品や、コンピュータやセンサーを利用した対話的(インタラクティブ)なもの、さらには人工知能やバイオテクノロジーの利用も含めた「ニューメディア・インスタレーション」が加わるとともに、表現は20世紀的な概念を超えて、ますます多様化、拡大している。

文=沖啓介

参考文献
『INSTALLATION ART NOW』(Sandu Publishing Co.. Ltd.、2013)
『Contemporary Installation Art』(Art Power International Publishing Co., Ltd.、2016)
『NEW MEDIA INSTALLATION』(Sandu Publishing Co.. Ltd.、2018)