ART WIKI

空間主義

spazialismo

 1940年代末から50年代にかけてイタリア・ミラノを拠点に提唱された芸術理論。「スパツィアリスモ」とも言う。運動の中心人物となったのは当時アルゼンチンのブエノスアイレスに滞在していたルチオ・フォンタナである。

 46年、フォンタナは同地の美術学校の仲間や教え子たちと「白の宣言」を起草し、従来の絵画、彫刻、詩を乗り越えること、新しい時代精神に対応した芸術が必要であることを主張した。翌年ミラノに帰国したフォンタナは、批評家のジョルジョ・カイセルリアン、哲学者のベニアミーノ・ヨッポロ、彫刻家のミレーナ・ミラーニと共に「第一次空間主義宣言」に署名。以降、メンバーを変えながら「第二次空間主義宣言」(1948年)、「空間主義技術宣言」(1951年)などを続けて発表した。これらの宣言では、絵画や彫刻の様式が時間と共に変化するものであることが説かれ、「不滅」とは異なる芸術の「永遠」や「空間を通じた形、色、音」を表現することが理念として掲げられた。

 フォンタナはこれらのコンセプトを実践すべく、ブラックライトやネオンといった新技術を用いたインスタレーションや、キャンバスに穴や裂け目を空けて「無限」の空間を取り込もうとした「空間概念」シリーズを制作したが、空間主義の理論と実際の作品とは必ずしも結びついていないとする見方もある。そのほか空間主義の運動に加わった作家としてロベルト・クリッパ、ジャンニ・ドーヴァが挙げられる。

文=中島水緒

参考文献
『ルチオ・フォンタナとイタリア20世紀美術 伝統と革新性をめぐって』(藤史彦著、中央公論美術出版、2016)
『フォンタナ展』(富山県立近代美術館、1986)