ART WIKI

企業メセナ

Mécénat

 企業が行う、直接的には見返りを求めない芸術文化支援のこと。メセナはフランス語で「芸術文化支援」の意味。1990年に当時資生堂の社長だった福原義春が企業メセナ協議会を創設。「メセナ元年」と呼ばれるこの年を機に、「即効的な販売促進・広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一環として行う芸術文化支援」という意味でメセナの言葉が一般に広まるようになった。

 その背景には、バブル期に多くの企業が芸術・文化に関するイベントを販売促進に利用して利潤を追求したことへのアンチテーゼがあったと考えられる。とりわけバブル崩壊後の90年代は、時代の変化に敏感な企業風土を培うべきとの考え方から、広告効果だけでなく活動の社会性や時代との適合性にメセナの価値が置かれるようになった。企業はメセナを通じて地域文化振興に貢献する、あるいは地元行政や公的機関に対して政策提言的な役割を果たすこともある。

 また、アートの専門家、行政、学校、NPO法人などとパートナーシップを組むケースも少なくない。メセナの活動形態は、資金面の支援、発表の場所や機会に対する支援、芸術・文化施設の運営、顕彰・コンクール・賞の実施など様々であるが、企業と芸術文化の双方が意義深い発展を遂げるには継続的な取り組みや対話が必須である。

文=中島水緒

参考文献
『アーツ・マネジメント概論』(伊藤裕夫ほか、水曜社、2004)
『いま、地域メセナがおもしろい 企業+アート+まちの実践』(企業メセナ協議会編著、ダイヤモンド社、2005)