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新表現主義

Neo expressionism

 1970年代末から80年代にかけて、アメリカ、ドイツ、イタリアなどで興った新しい具象絵画の動向。

 70年代に席巻したミニマリズムやコンセプチュアル・アートへの反動から、人物像、歴史的・神話的主題などを荒々しい表現主義風の筆致で描くスタイルが若手作家を中心に世界的に隆盛した。国によって呼称が異なり、イギリスでは「ニュー・ペインティング」、アメリカでは「バッド・ペインティング」、フランスでは「フィギュラシオン・リーブル」、ドイツでは「ノイエ・ヴィルデン」あるいは「ネオ・エクスプレッショニズム」、イタリアでは「トランス・アヴァングァルディア」などと呼ばれる。

 代表作家はジュリアン・シュナーベル、フランチェスコ・クレメンテ、デヴィッド・サーレ、アンゼルム・キーファー、ゲオルグ・バゼリッツなど。78年の「ニュー・イメージ・ペインティング」(ホイットニー美術館)、81年の「ア・ニュー・スピリット・ペインティング」(ロイヤル・アカデミー)、82年の「ツァイトガイスト」(グロピウス・バウ)といった歴史的展覧会で相次いで新表現主義の動向が紹介され、国際的な認知と評価を得た。

 「ツァイトガイスト」を企画したクリストス・ヨアヒミデスは、現代美術のアカデミズム化や官僚主導による大型美術展の傾向に異議を唱え、新表現主義の台頭がそれらの状況に反抗しようとする意識のあらわれであると見解を示した。

文=中島水緒

参考文献
『アール・ヴィヴァン』9号、「特集=ペインティング・ナウ」(西武美術館、1983)
『美術手帖』「特集=ニュー・ペインティング現象」(1984年2月号)