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アート・マネジメント

Art Management

 芸術・文化活動と社会をつなぐための業務、もしくは方法論やシステムのこと。確たる定義をもつ職種名というよりは、アートに関わるマネジメント業務全般を指す用語として広い意味で使われる。その仕事内容は、展覧会・イベント・プロジェクトの企画・運営、営業、広報、進行管理、資金調達、普及活動、人材育成など非常に多岐にわたる。また、現場や職業によっては、実務能力から経営知識、語学力、芸術に対する理解力まで幅広い知識や専門能力が求められる。

 もともとアート・マネジメントは1960年代のイギリスとアメリカでほぼ同時期に使われるようになった概念である。欧米でマネジメントシステムの制度化がはじまったのは、資本主義経済が確立していくなかで国による文化政策が広がり、高度な知識とマネジメント能力を持つ専門家の育成が要請されたためであった。日本でも80年代後半のバブル期に、音楽ホール、芸術劇場、美術館、博物館といった文化施設の建設ラッシュが進み、中身のない「ハコモノ」批判が端緒となって、人材育成の必要性が唱えられるようになる。91年に慶應義塾大学で初めて「アート・マネジメント」の名を冠した講座が開設されたほか、98年には日本アートマネジメント学会が発足している。

文=中島水緒

参考文献
『これからのアートマネジメント “ソーシャル・シェア”への道』(中川真、フィルムアート社編集部編、フィルムアート社、2011)
『芸術と経営 アートマネジメント』(小林進、雄山社、2004)