ART WIKI

グループ幻触

Group Genshoku

 1966~71年にかけて静岡を拠点に活動した前衛美術家のグループ。主要メンバーは、飯田昭二、小池一誠、鈴木慶則、丹羽勝次、前田守一。評論家の石子順造の理論に影響を受けながら活動を展開し、「見ること」を問うトリッキーな作品から、自然物を提示した「もの派」風の作品まで幅広い傾向を示した。66年5月にグループ結成、同年7月にギャラリー創苑でグループ展を開催。主要メンバーの一人である前田によれば、結成当初のコンセプトは「『表現」と『造形」、『主観」と『客観」のあいまいな関係に焦点を当て、その虚像性を浮かび上がらせること」であった。68年には中原祐介と石子順造が企画した「トリックス・アンド・ヴィジョン」(東京画廊、村松画廊)に幻触の作家たちが多く参加する。

 もの派と深い関わりを持っていた幻触が日本現代美術史上であまり取り上げられてこなかったのは、静岡で活動していたため中央の美術界にその動向が伝えられなかったこと、トリック手法を使う美術家集団という側面ばかりが強調されたこと、石子が77年に夭折し、もの派と幻触の関係を語る人間がいなくなったことなどが理由に挙げられる。しかし2000年代以降は再評価の兆しが静岡を中心に見られるようになり、展覧会や書籍の刊行を通じて石子からの影響やもの派との関わりについての検証作業が進められるようになった。

文=中島水緒

参考文献
『「もの派」の起源 石子順造・李禹煥・グループ「幻触」がはたした役割』(本阿弥清、水声社、2016)
『グループ「幻触」と石子順造 1966-1971』(川谷承子編、静岡県立美術館、2014)
『幻触』(尾野正晴編、鎌倉画廊、2006)