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プロセス・アート

Process Art

 美術作品として完成した最終形態よりも、むしろ作品をつくる「プロセス」を重視し、素材や技法の特性に焦点を当てる表現。1960年代後半から70年代にかけての表現を構成する傾向であるが、ジャクソン・ポロックのドリッピングやモーリス・ルイスのステイニング(染めこみ)など抽象表現主義絵画の要素にも遡ることができる。プロセスや素材の特性を重視した傾向は、ミニマル・アート、コンセプチュアル・アート、パフォーマンス・アートから離合集散してポスト・ミニマルな傾向へとつながっている。主な作家は、ロバート・モリス、リチャード・セラ、キース・ソニア、エヴァ・ヘス、ブルース・ナウマン、ロバート・スミッソン、ゲイリー・キューン、バリー・ル・ヴァ。

「プロセス・アーティストたちは、身体、偶然性、即興性や、ワックス、フェルト、ラテックスといった非伝統的な素材の自由開放的な性質にまつわる事柄を扱う。これらの素材を用いて、切る、吊るす、落とすなどの行為や、成長、凝縮、凍結、分解など有機的なプロセスによって生じる不規則な配置で、風変わりな形を作り出している」とグッゲンハイム美術館が解説している。モリスはプロセスと時間の観点や素材の特性を重視する「アンチ・フォーム」 を提唱し、プロセス・アートの独特な理論を展開している。

 この動向を代表する展覧会は、69年にホイットニー美術館でマーシャ・タッカーとジェームス・モンテ企画による「アンチ・イリュージョン:手順 / 素材(Anti-Illusion: Procedures / Materials)」展で、多様な素材を用いて配置したモリス、鉛を撒く「スプラッシング」の作品を展示したセラ、「パフォーマンス回廊」という構造物を展示したナウマン、美術館の外に氷ブロックを展示したラファエル・フェレールなどの美術家が出品、また音楽家のフィリップ・グラス、スティーヴ・ライヒ、映像作家のマイケル・スノウは、音楽や映像での手順や時間性に注目されて参加している。

 また同年には、ハラルド・ゼーマンが、ランド・アート、コンセプチュアル・アート、アルテ・ポーヴェラなどの当時の新しい表現潮流を加えキュレーションした「ライブ・イン・ユア・ヘッド:態度が形になるとき 作品―概念―過程―状況―情報」展が、スイスのクンストハーレ・ベルンを皮切りにヨーロッパ各地を巡回。鋭いキュレーションを展開したゼーマンの企画で、その後の現代美術の動向に大きな影響を与えたことが評価され、2013年に「態度が形になるとき:ベルン 1969/ヴェニス2013」展として再現された。

 またイギリスでは、絵画の制作プロセスをキャンバスに直線、曲線などからなる図形を画面いっぱいになるまで描く画家バーナード・コーエンや、ありふれた文房具を使ってそれらの認識されにくい関係性を描いたマイケル・クレイグ・マーティン、絞り、シャッター・スピードを変えて鏡に映っているカメラが自身を連続撮影するプロセスを写し込んだジョン・ヒリアードなどがいる。

文=沖啓介

参考文献
クリスチャン・ラテマイヤーほか『Exhibiting the New Art: 'Op Losse Schroeven' and 'When Attitudes Become Form' 1969』(Afterall Books、 2010)
ホイットニー美術館「Anti-illusion: procedures/materials 1969」
https://archive.org/details/antiillusionproc61whit
Artforum APRIL 1968「ANTI FORM」
https://www.artforum.com/print/196804/anti-form-36618
グッゲンハイム美術館「Process art」
https://www.guggenheim.org/artwork/movement/process-art
テイトギャラリー「Process art」
https://www.tate.org.uk/art/art-terms/p/process-art