ART WIKI
ソーシャリー・エンゲイジド・アート
Socially Engaged Art
「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)」「ソーシャル・プラクティス」など名称は異なるがほぼ同義語の活動は、1990年代以降に顕著になった、社会とのリレーショナルな関係を結ぶ実践的な活動を意味している。パブリック・アート、コオペラティブ・アート、フェミニスト・アート、アクティビスト・アートなどの諸活動、また学術諸分野の学際的な参加や、ジェンダー、社会や性のマイノリティ、地域課題などへの様々な取り組みを含んだ幅広い方向性が見られる。ほかにも公共圏に設置される従来のパブリック・アートとの相違を明らかにするスザンヌ・レイシーの「ニュージャンル・パブリック・アート」や、対話型の「ダイアロジカル・アート」、参加型の「パーティシペトリー・アート」などの名称がある。
また「ソーシャル・プラクティス」「ソーシャリー・コオペラティブ・プラクティス」など「アート」が名称に含まれない(もしくはアートや作品という枠組みを前提としない)ものもある。またスタジオでの制作や美術館やギャラリーでの展示から離れる「ポスト・スタジオ・プラクティス(post-studio practice)」としてこれらをとらえる場合もある。どれも同じ方向性にはあるが、アートと社会の関わりや距離の取り方、方法に若干の相違が見られる。
60年代後半から70年代にかけて高揚した社会改革、フェミニズムなどの気運と、コンセプチュアル・アート、パフォーマンス・アートなどからの流れも大いに見られるが、社会的関与の実践を従来の美術批評の枠組みとは別にとらえていく傾向もある。また美術史に類例が見られる従来の社会派的なアプローチ、政治的アートとはテーマなどでは重なりつつも、在り方として一線を画すものもある。
他方で「観客、鑑賞者(spectator)」の立場を廃して参加を促す「参加型アート」をめぐっては、20世紀初頭からの社会的な変動と芸術活動とも結びつけて「社会的転回(クレア・ビショップが使い始めた[social turn])」として活動の背景をとらえることもできる。
社会的な実践方法にはいくつかの類型が見られる。パーティシペーション(参加)、コミュニティ・オーガナイジング(コミュニティ構築)、コラボレーション(協働)、ダイアローグ(対話)、ディスカッション(討論)、エデュケーション(教育)、インターベンション(介入)などを活動の基軸にするものが多い。また従来のソーシャルワークでも取り組まれてきた方法が、アートの活動にも取り入れられている。
「コレクティブ」として共通の目的、信条を共有するゆるやかな集まりとして関わる場合も多い。とりわけアーティスト以外に参加者を表現のプロセスに求める参加型プロジェクトでは、アーティストによる自己表現の追求というモダニズム的なアプローチと異なる立脚点を見出すことも多い。これらのアプローチはとくに限定されたものではなく、多様な環境や条件のなかで様々なケースを見ることができ、つねに更新されている。この分野で著名な研究者のひとりであるグラント・ケスターが編集するソーシャリー・エンゲージド・アート批評ジャーナル「FIELD」や、国内では特定非営利活動法人アート&ソサエティ研究センターなどのウェブサイトや出版物で世界的な視点で活動が報告されている。
また「ソーシャル・プラクティス」「ソーシャリー・コオペラティブ・プラクティス」など「アート」が名称に含まれない(もしくはアートや作品という枠組みを前提としない)ものもある。またスタジオでの制作や美術館やギャラリーでの展示から離れる「ポスト・スタジオ・プラクティス(post-studio practice)」としてこれらをとらえる場合もある。どれも同じ方向性にはあるが、アートと社会の関わりや距離の取り方、方法に若干の相違が見られる。
60年代後半から70年代にかけて高揚した社会改革、フェミニズムなどの気運と、コンセプチュアル・アート、パフォーマンス・アートなどからの流れも大いに見られるが、社会的関与の実践を従来の美術批評の枠組みとは別にとらえていく傾向もある。また美術史に類例が見られる従来の社会派的なアプローチ、政治的アートとはテーマなどでは重なりつつも、在り方として一線を画すものもある。
他方で「観客、鑑賞者(spectator)」の立場を廃して参加を促す「参加型アート」をめぐっては、20世紀初頭からの社会的な変動と芸術活動とも結びつけて「社会的転回(クレア・ビショップが使い始めた[social turn])」として活動の背景をとらえることもできる。
社会的な実践方法にはいくつかの類型が見られる。パーティシペーション(参加)、コミュニティ・オーガナイジング(コミュニティ構築)、コラボレーション(協働)、ダイアローグ(対話)、ディスカッション(討論)、エデュケーション(教育)、インターベンション(介入)などを活動の基軸にするものが多い。また従来のソーシャルワークでも取り組まれてきた方法が、アートの活動にも取り入れられている。
「コレクティブ」として共通の目的、信条を共有するゆるやかな集まりとして関わる場合も多い。とりわけアーティスト以外に参加者を表現のプロセスに求める参加型プロジェクトでは、アーティストによる自己表現の追求というモダニズム的なアプローチと異なる立脚点を見出すことも多い。これらのアプローチはとくに限定されたものではなく、多様な環境や条件のなかで様々なケースを見ることができ、つねに更新されている。この分野で著名な研究者のひとりであるグラント・ケスターが編集するソーシャリー・エンゲージド・アート批評ジャーナル「FIELD」や、国内では特定非営利活動法人アート&ソサエティ研究センターなどのウェブサイトや出版物で世界的な視点で活動が報告されている。
参考文献
アート&ソサイエティ研究センター SEA研究会(秋葉美知子、工藤安代、清水裕子)『ソーシャリー・エンゲイジド・アートの系譜・理論・実践 芸術の社会的転回をめぐって』(フィルムアート社、2018)
クレア・ビショップ『人工地獄 現代アートと観客の政治学』(大森俊克訳、フィルムアート社、2016)
パブロ・エルゲラ『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門』(アート&ソサイエティ研究センター SEA研究会[秋葉美知子、工藤安代、清水裕子]翻訳、フィルムアート社、2015)
ナト・トンプソン『Living as Form: Socially Engaged Art from 1991-2011』(The MIT Press、 2012)
スザンヌ・レイシー『Mapping the Terrain: New Genre Public Art』(Bay Press、1994)
FIELD http://field-journal.com
アート&ソサエティ研究センター https://www.art-society.com
SEAリサーチラボ http://searesearchlab.org