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ボディ・アート

Body Art

 身体(多くの場合アーティスト自身の身体)を主要な題材にした表現。「ボディ・アート」の定義は大きく分けて2つあり、主に1960年代以降の「ハプニング」などのパフォーマンスのサブカテゴリーとして肉体を使ったアートと、刺青、ピアシング、インプラントなど広大なサブカルチャーや人類学を伴う身体改造とがある。通常の場合、アートとしては前者を指すものがつねではあるが、近年では身体改造のアート的なアプローチもあり、またボディハッキングのような先端技術を取り入れたものもあって、身体観の変遷とともにアプローチが多様化している。

 従来のアート系のアプローチとしては、ヴィト・アコンチが自分の身体に歯型を残した《Trademarks》(1970)、クリス・バーデンが自らを撃たせた《Shoot》(1971)や、釘で自分の身体をフォルクスワーゲンに打ちつけた《Trans-fixed》(1974)。このほか、マリーナ・アブラモヴィッチの《Rhythm 0》(1974)は、用意されたナイフ、羽、銃など72種類の道具を望むままに使っていいという指示書を置き、痛みや快感を受けるというものであった。これらは自身の身体に痛みを与えることと、70年代の概念芸術的な内容で共通している。これらより以前の身体をキャンバスのように使うイヴ・クラインの「人体測定」(1960)のようなボディ・ペインティングとパフォーマンスをボディ・アートとしてとらえることもあり、同様にニューヨーク時代の草間彌生のパフォーマティブなボディ・ペインティングも、ボディ・アートとパフォーマンス、またアメリカ社会のなかでのアジア人女性の身体という文脈でも取り上げられている。

 身体改造からのアート的アプローチでは、90年代、オルランが自身の肉体を名作絵画のなかの女性に真似て整形手術する「カーナル・アート(肉体芸術)」を展開。ステラークによる、70年代のボディ・アート的な「SUSPENTIONS」、ロボティクスを取り入れた「THIRD HAND」、また2000年代に開始した、第3の耳を腕に移植したテクノロジカルな身体改造「EAR ON ARM」がある。

 ボディ・アートの分野には、身体改造、トランス・ヒューマンへと時代とともに変化する身体表現を見ることができる。

文=沖啓介

参考文献
フレッド・ホルマンほか『クリス・バーデン』(Locus Plus、2007)
マーカード・スミス『Stelarc: The Monograph』(The MIT Press、2007)
『Orlan: carnal art』(Flammarion、2004)
『Marina Abramovic: Artist Body Performances 1969-1998』(Edizioni Charta、1998)
アメリア・ジョーンズ『Body Art/Performing the Subject』(University of Minnesota Press、1998)