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ベルト・モリゾ

Berthe Morisot

 ベルト・モリゾは1841年フランス・ブールジュ生まれ。ロココ期を代表する画家のひとり、ジャン・オノレ・フラゴナールの血を引く母と、建築家を志した父を持ち、芸術に理解のある環境で育つ。14歳から姉・エドマとともに本格的に絵を学び始め、20歳の頃にバルビゾン派の風景画家カミーユ・コローに師事。印象派に先駆けて、大気や光を色彩で表現したコローのもと、戸外で自然を描く方法を習得する。64年にサロンで入選。68年、画家のファンタン=ラトゥールを介して、エドゥアール・マネと知り合う。マネの作品《すみれの花束をつけたベルト・モリゾ》(1872)のモデルになるなど交流が続き、黒を色彩に加えるといったマネの人物表現に影響を受ける。74年にはマネの弟・ウジェーヌと結婚。女性の自立が難しかった当時、寛容な夫の支援で画家としての活動を続けることができた。同年の第1回印象派展では、姉・エドマが眠るわが子に愛情のまなざしを向ける場面を描いた《ゆりかご》(1872)を出品。以降、開催された印象派展のほぼすベてに参加する。

 81〜84年、パリに自宅を新築するため、一家はセーヌ川沿いにあるブージヴァルに滞在。クロード・モネやオーギュスト・ルノワールなど印象派の画家たちが好んだ閑静な場所で、幼い娘・ジュリーと夫の姿、庭や周辺の風景を主題に描く。同じ頃、南仏ニースを出発地にイタリアへ旅行。フィレンツェで鑑賞したサンドロ・ボッティチェッリの作品に感銘を受ける。パリに戻る頃には画家としての評価も高まり、ブリュッセルでの「二十人会」(1887)やニューヨークでの印象派展に参加。制作においては、即興的でなく、丹念に構図を組んで描くことを試み、ボッティチェッリの《春(プリマヴェーラ)》(1482頃)から着想を得た渾身の大作《桜の木》(1891)を手がける。92年、夫・ウジェーヌが死去。その3年後に亡くなる。代表作に《窓辺に座る画家の姉》(1869)、《ブージヴァルの庭のウジェーヌ・マネと娘》(1881)、《ピンクのドレス》(1870)。柔らかい色遣いと筆触を残した大胆なタッチ、透明感のある光の表現で、主に家族や身近な人物、日常の風景を描いた。