YouTubeチャンネル「Watercolor by Shibasaki(柴崎春通の水彩チャンネル)」で活躍する画家YouTuber・柴崎春通。現在はクレヨン画だけで構成される個展を準備中だ。そんな柴崎が多くの人が絵を描くことの大切さや、自身が監修を務めたぺんてる株式会社のアートクレヨンの魅力を語った。(PR)
クレヨン画にたどり着くまでの道のり
──YouTubeチャンネル「Watercolor by Shibasaki(柴崎春通の水彩チャンネル)」は、柴崎さんの物腰やわらかな語りや絵を描く楽しさが伝わるとあって、国内外問わず幅広い人々から人気を集めています。いまや日本でもっとも有名な画家のひとりと言える柴崎さんですが、これまでどのような道を歩んできたのでしょうか。
小学生のころから絵が好きで、高校時代も美術部の部長をやるなど、つねに絵を描くことが生活のそばにありました。高校卒業の直前、悩んだ末に公務員の内定を辞退し、美術予備校で美大を目指すという決断をしたんです。結局美大には進学しなかったのですが、和光大学の芸術学科でひたすら絵を描く毎日を始めたんです。
当時は学生運動の最盛期で多くの学生がその波に乗って活動をしていましたが、それを横目にひとり黙々と制作に向き合っていましたね。授業も開講されないことが多いので、自宅と学校のアトリエを行き来しながら、ひたすら絵に向き合う時間が続きました。
いまでこそ、絵を楽しく描くというメッセージをみなさんに伝えていますが、当時は若く、頭でっかちになりがちで、「画家として何をすべきか」「技術を高めなければ」といったことに必死でした。絵を描き始めると、もう自分との戦いですからね。自分が何をどのくらい達成しているのか、そればかりを考えながら、ほかは何にも目に入らなかったです。
──当時は油彩の技術を極めることに邁進していたのだと思いますが、やがて柴崎さんは水彩で多くの支持を得るようになります。きっかけは何だったのでしょうか。
大学卒業後、絵画の通信教育講座で講師を務めることになりました。最初、私は油彩のインストラクターだったのですが、そこでアメリカから教えに来るアーティストたちが水彩で素晴らしい絵画を描くさまを目にしたんですね。
当時の日本では水彩画といったら明るい色調が主流でしたが、アメリカの作家たちが見せる暗色の水彩のおもしろさに惹かれました。また、油彩は色を乗せたり、削ったりすることで画面の構成を深めていきますが、水彩は乾かないうちにどんどん色を乗せていかなければいけないので、即断即決ですし、それで油彩にも負けない作品をつくる醍醐味がある。それ以来、水彩に重点的に取り組むようになったんです。
──水彩の技術を高めながら、これまで多くの人にその技術を教えてきたわけですが、近年になりクレヨンという新たな画材に挑戦するきっかけは何だったのでしょうか。
息子に勧められてYouTubeチャンネルを開設してから、水彩画の解説動画などを投稿していましたが、コロナ禍で、自分が教えている多くの教室も休講になり、YouTubeに本腰を入れることになりました。
それまでの私のYouTubeチャンネルでは、どちらからというと絵が魔法のようにできていく過程を楽しんだり、私が描く姿を見ることで癒やさたり、といったコメントが多かったわけです。ただ、コロナ禍となり、人々が自宅で過ごす時間も増えたので、これまで見ているだけだった視聴者のみなさんにも、自分で絵を描くことを楽しんでほしいなと思うようになりました。そこで目をつけたのが、透明水彩よりも多くの人にとって身近なクレヨンという画材でした。
クレヨンを使い始めてから、コメント欄の内容は大きく変わりました。「自分も描きたくなった」という感想から、「どのようなクレヨンや紙を買った」といった実践的なものまで、みなさんが見るだけではなく、描くことに取り組むようになったことが感じられました。
アートクレヨンの魅力を個展で発信
──柴崎さんはぺんてる株式会社の大人も使えるクレヨン・アートクレヨンの開発も監修されています。どういったところを重視して監修されたのですか?
ぺんてるさんにはクレヨンの手軽さを失わずに、でも本格的に描ける画材にしたいとお願いをしました。油彩のように鮮やかなまま色を幾度も重ねられるクレヨンを目指したんです。また、通常のクレヨンは広い面積を塗るのが大変ですが、アートクレヨンは伸びが良く面取りもできるので、大きなキャンバスを埋めることも簡単です。
クレヨンの手軽さはそのままに、混色や塗り重ね、広い面積の塗りつぶしといった、油彩のような表現ができるので、幅広い表現に挑戦することができる、付き合えば付き合うほどおもしろくなる画材に仕上がっているはずです。
──この「アートクレヨン」の製品化にあたって、2月15日まで実施されているクラウドファンディングも盛り上がっているようですね。
アートクレヨンの開発のきっかけは、私がクレヨンを使って絵を描いている動画を見て、ぺんてるの社員さんが訪ねてきてくれたときに「大人向けのクレヨンをつくってほしい」と提案したことなのですが、ここまで大きな動きになって驚いています。このクラウドファンディングをきっかけに、より多くの人がクレヨンで絵を描くことの楽しみを知ってくれたらいいですね。
──来年1月16日より、初のクレヨン画だけで構成される個展「柴崎春通クレヨン画展」も、銀座第7ビルギャラリーで開催されます。どのような展覧会になるのでしょうか。
水彩画の個展では、視聴者を中心に本当に多くの人が訪れてくれました。上は私と同じくらいの年齢の方から、下は3歳くらいのお子さんまでが来てくれます。
今回はクレヨン画だけの展覧会なので初めての試みですし、お客さんたちの反応も水彩のときとはまた違うかもしれず、とても楽しみです。目下制作中ですが、できるだけ多くの作品点数を用意しようと思っています。画題も幅広い人が親しみを持てるように風景から人物、静物まで様々。ぜひ、多くの人に訪れてもらいたいです。
大人にこそ絵を描く日常を
──柴崎さんが「みんなが絵を描くこと」を大切にする理由はなんでしょう?
私の動画のコメント欄を見てください。全然荒れていないんですよ。絵を描くことで心が穏やかになるということもあると思いますが、それ以上に絵って自分と向き合うことだと思うんですよね。他人のことを気にしてはいられない。
絵を描いていると、自分に何ができて何ができないかがよくわかります。言葉だと流れていってしまうけど、絵は自分がやっていることの積み重ねがはっきりわかる。もちろん、目の前にはっきりとした成果が現れるので、嘘がつけないという厳しさもあると思います。
私はこれまでの長い講師生活のなかで、生徒それぞれが持つ悩みを共有しながら、一人ひとりの進みと伴走することを大切にしてきました。私だって20代の頃は同じように悩んだりしていましたから、その気持ちはよくわかるんです。みんなが絵を描けば、悩みを共有し、一緒に向き合うことができる。子供から大人まで、みなさんがクレヨンのような身近な素材を手にとって絵を描けば、世の中がもっと豊かになるのではないでしょうか。
──ある意味で、大人にこそ絵を描くことが必要だとも言えますね。
会社の人間関係だとか、子育てだとか、老後の不安だとか、いろいろなお悩みがコメント欄や直接のお便りとして私のもとに届きます。大人として歳を取るにつれて、そういった様々な悩みを抱え、日々の生活に追われてあっという間に年月が過ぎていくものです。でもそんな時だからそこ、ふと立ち止まって目の前に広がる空や道端の樹木を見ていただきたい。自然の美しさ、素晴らしさにハッとすることでしょう。
絵を描くと言うのはまさにご自分の日常を取り戻す行為です。いまを生きる大人に必要なことだと思います。