EXHIBITIONS

山本秀明「Emotion」

2022.03.04 - 03.20

山本秀明 Emotion 2022

山本秀明「Emotion」展示風景

 s+artsでは、アーティスト・山本秀明の個展「Emotion」を開催している。

 山本は1950年北海道生まれ、75年横浜国立大学美術科卒業。「自分自身の地層を作る」と語る山本は、豊かな自然のなかで木と対峙しながら作品を制作している。独自の手法により形成される作品は、見る者が吸い込まれるようなその存在感で多くの人々を魅了し、これまでに約15ヶ国の個人や企業に作品が渡る実績を持ち、国内外で高い評価を得ている。

 山本の作品の特異性は、無垢の木塊を彫り削るのではなく、3〜4センチメートル角の松の角材を接着して積み重ね、面をつくるところから始まる。それをユニットにしてラフなかたちを立ち上げ、表面をチェーンソーや丸鋸で削り出していく。数え切れないほどの線を刻んだ後、松の樹脂や柿のタンニンなどを用い、昔から日本で使われる手法で木を保護する。綿密に計算した上で構築されていく角材の束が、熟練された技術と研ぎ澄まされた感覚により削られ、新しいかたちが生まれてくるその様は、荒々しさと繊細さが混じり合っている。

 山本は幼少期から地層に興味を持ち、縄文土器、化石などの発掘や、断層のでき方をずっと眺めては過去のものやことに思いを馳せる時を過ごしてきた。木を素材として作品づくりを始めたとき、その頃の感覚が原点となって影響し、かたちとなって現れてきたという。歴史や時間、生命感を強く感じたことから、角材を積み重ね、質感を出すために丹念に削ることで地層を連想させ、降り積もる時間の経過を表現している。

 本展では、「可能性への揺さぶり」に焦点を当て、新たな色彩や技法を取り入れた作品を展示。また、これまで独自に制作を続けてきた山本が、鑑賞者とのコラボレーションというかたちのコミュニケーションを取り入れた作品も発表する。本展において、制作過程から鑑賞者との関わり方まで、いままでとは異なる方法を取り入れることで、様々な意味で幅のあるものが得られたと山本は話している。

「ちょっと前になるが、若者は事あるごとに『エモい』という言葉を使っていた。エモいとはemotionalからきている言葉で、何とも言い表せない素敵な気持ち、心の素敵な揺れということだそうだ。今回の個展のタイトル『Emotion』は、これを使った花言葉ならぬ色言葉でもある。私は元々絵描きだったこともあり、色彩は大好きだ。今までの作品は、どちらかというと色は少なく抑えていた。今回はカシューという、日本の伝統的『うるし』由来の素材で鑑賞者の心を激しく揺らしてみたい(山本秀明)」。