EXHIBITIONS

2021コレクション展Ⅳ

池田栄廣生誕120年・吉村益信没後10年 革新と前衛の美術

2021.12.24 - 2022.01.18, 2022.01.20 - 02.14

吉村益信 Neon Cloud-Neon ネオン雲 1966

《ネオン雲》と吉村益信(東京画廊個展会場にて、1967)

ライト・オン・メビウス スケッチ(作家資料より)※個人蔵

吉村益信 VOIDISM(ニューヨークにて撮影)

池田栄廣 洋犬と初夏の園(仮題) 1930年代頃

 大分県立美術館がコレクション展で、「池田栄廣生誕120年・吉村益信没後10年 革新と前衛の美術」を開催中。既成の概念や形式にとどまらず、革新的・前衛的な表現を目指した美術のなかから、池田栄廣をはじめとした戦後日本画の動向や、1960年にネオ・ダダイズム・オルガナイザーズを結成した前衛芸術家・吉村益信を紹介している。

 吉村益信(1932〜2011)は、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズの活動で鮮烈な印象を与え、その後も多岐にわたる創作活動を行った大分市出身の芸術家。本展示では、大分県立美術館が所蔵する吉村の代表的な作品に、晩年過ごした神奈川県・秦野市のアトリエに残された作品や資料を交え、1960〜70年代の吉村の活動をひも解く。

 1962年に渡米した吉村は、石膏による立体作品《VOIDISM(ヴォイディズム)》を制作し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されるなど活躍の場を広げた。帰国後は、ネオン管や最新のテクノロジーを利用したライトアート作品を発表。その後、1970年の大阪万博への参加で多数のパヴィリオンに関わるなど、現代美術家としての地位を確立した。本展では当時の写真やポスター、作品の下絵や設計図面、プロジェクトの企画書なども展示し、複数のプロジェクトで一貫した実験的精神を示した吉村の姿に迫る。

 いっぽう池田栄廣(いけだ・えいこう、1901〜1992)は、広島県呉市に生まれ、別府でタクシー運転手をしていた経歴をもつ。日本画家の堂本印象との出会いをきっかけに画家を志して京都に出ると、堂本の画塾・東丘社で頭角を現し、1927年の第8回帝展で、絨毯の上に横たわる堂々とした洋犬を描いたデビュー作《犬》が初入選となった。以後も洋犬を主題として帝展で入選を重ね、のちに院展に活動の場を移した栄廣は、人物や動植物をユニークな視点でとらえた斬新な日本画を生み出した。

 本展示では、栄廣が主に画業初期に取り組んだ洋犬をテーマとする《洋犬と初夏の園》(仮題)といった動物画や、日展で特選となった《寒菊》に代表される豊かな情緒を酌んだ植物画を紹介。さらに、画業の充実期に院展で白寿賞を受賞した《染彩繍》に見るような、ユニークな視点と構想がうかがえる斬新な人物表現などに注目しながら、栄廣の作品を特集する。