EXHIBITIONS

ミヤ・アンドウ「Mugetsu(Invisible Moon)」

MAKI Gallery / 天王洲 II
2021.09.15 - 10.13

ミヤ・アンドウ Unkai(Sea Of Clouds)May 22 2021 5:47 AM NYC 2021

ミヤ・アンドウ 手前は《January 8 2021 Matsu Pine Silver》、奥は《January 1-28 2021 Kumo(Cloud)Grid NYC》(いずれも2021)

 ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ミヤ・アンドウの個展「Mugetsu(Invisible Moon)」がMAKI Gallery / 天王洲 IIで開催されている。

 ミヤ・アンドウは1973年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。鉄、アルミ、木など様々な素材を使い、抽象的な絵画や彫刻、インスタレーションなどを制作している。その作品は、伝統と現代、産業と自然、東洋と西洋を巧みに融合させ、繊細な感性で自然の在りようを映し出す。

 アンドウは約1年前、天王洲 I・IIのギャラリースペースに渡る MAKI Gallery最大規模の展覧会を開催し、絵画、彫刻、インスタレーションなどの作品群を発表。本展では、作家の代表作である「Kumo(Cloud);雲」「Unkai (Sea of Clouds);雲海」シリーズ、そして「Shou Sugi Ban;焼杉板」と作家が名づける彫刻作品に焦点を当てる。

 西洋と東洋、2つの文化間において自身のアイデンティティと経験を育んだアンドウ。作品のタイトルを日本語とその意味に近い英語を併記することで、2つの文化の思考や認識の違いを表現する。そのような表現のひとつが、本展のタイトル「無月」だ。また西洋の思想にはないニュアンスを含んだ日本語による自然の描写の仕方が、自らの作品のインスピレーションになっていると言う。

 今回の新作の多くは一日の特定の時間や特定の季節、または特定の場所を連想させるような独特の色合いが特徴。雲は移ろいゆく自然の儚さ、無常さを象徴することから、アンドウの作品に頻繁に登場するモチーフであり、そこには禅宗の概念である「無」という言葉が重要な役割を果たしている。

 いっぽう、アンドウの彫刻作品はこの「無」という概念に対する探求の一部である。再生木材と硝酸銀を素材に用いて自然のサイクルと過ぎ行く時間に考えを巡らせ、そして木が生きた時の流れを作品のなかに示すことで、私たちに流れゆく時間に対する考察を促す。