EXHIBITIONS

細倉真弓「Sen to Me」

2021.09.04 - 10.09

細倉真弓 Sen to Te #41 2021

 Takuro Someya Contemporary Artは、細倉真⼸の個展「Sen to Me」を開催。本展は、今年4⽉の映像の展覧会「ジギタリス あるいは1人称のカメラ|石原海、遠藤麻衣子、⻑谷川億名、細倉真弓」を企画した細倉の、同ギャラリーでは初めての個展となる。

 細倉は東京と京都を拠点に活動。⽴命館⼤学⽂学部および⽇本⼤学芸術学部写真学科卒業。触覚的な視覚を軸に、⾝体や性、⼈と⼈⼯物、有機物と無機物など、移り変わっていく境界線を写真と映像で扱う。主な個展に「NEW SKIN |あたらしい肌」(mumei、東京、2019)、「Jubilee」(nomad nomad、⾹港、2017)、「Cyalium」(G/P gallery、東京、2016)などがある。

 本展では、「ジギタリス、あるいは⼀⼈称のカメラ」で展⽰した映像作品「digitalis」シリーズに加え、フォトグラムに機械刺繍を施した新シリーズ「Sen to Te」を発表。2つのシリーズでは、写真のコラージュやレイヤーはシンプルなものに変化し、鑑賞者が⾃らのオリジナルな「視線」を再発⾒する装置として提⽰される。

「digitalis」シリーズは、⽇々、細倉が撮りためてきた写真をコラージュした1枚の巨⼤なイメージのなかを、カメラがゆっくりとスクロールしていく映像作品。イメージの個々の要素は、細倉の視点が反映されたものだが、映像のゆっくりとした、遅すぎるほどの横移動は、焦れた鑑賞者の⽬線のさまよいを促す。

 いっぽう新作「Sen to Te」は、フォトグラムのプリントに刺繍を施した作品であり、近年の細倉が⾏ってきたデジタルによる制作プロセスが、アナログで物理的な空間へと移⾏している。カメラを使わない写真の技法であるフォトグラムを、細倉は「写真のドローイング」のようなものと位置づけている。細倉にとってフォトグラムの⼿法は、⾝体の運動をそのまま痕跡として⽀持体に定着させるという点において、ドローイングと似た性質を持つ。

「Sen to Te」では、デリケートな扱いを前提とする「ものとしての写真」に対して無慈悲にも写真に刺繍のための無数の⽳を開ける。刺繍はミシンによって⽣成され、現代ではデジタルデータと強く結びついている「写真」をアナログかつ⼀点物のユニークにすること、そして、いまだに根強く⼈の⼿を想起させる刺繍を、デジタルデータで出⼒することによって、それぞれのメディウムが持つ条件を転覆している。