EXHIBITIONS

新世代への視点2021

豊海健太 ‐世界の音が、すべて消える時‐

豊海健太 in a cell 2021

 銀座・京橋の8画廊が各々に新鋭作家の個展を同時開催する合同企画「新世代への視点」が今年も開催。ギャルリー東京ユマニテは、漆芸で独特の表現を展開する豊海健太を迎える。

 豊海は1988年大阪府生まれ。金沢美術工芸大学で漆芸を専攻し、2018年に博士号を取得。現在は金沢卯辰山工芸工房に勤務する傍ら、岐阜県美術館の企画展「素材転生―Beyond the Material」(2021)に出品するなど、精力的に作品を発表している。

 豊海の作品の漆黒の画面に白く浮かび上がるイメージは、砕いた卵の殻を貼る卵殻技法という漆の伝統的な手法で描かれている。画面に近づくと、点描のように細かい卵殻が並べられ、顕微鏡で見るシャーレのなかのミクロの世界のように細密で有機的な世界が広がる。

 卵殻は細かく砕くことで細密描写が可能だが、その微細な卵殻を貼る作業は、カルシウムの元素を構築し、新たな物質をつくり上げるような感覚があると豊海は言う。微細な素材を緻密に構築することで生まれる表現は、見る人の記憶に残る美しさをつくり出している。

 本展「世界の音が、すべて消える時」では、玉虫細工や玉虫蒔絵と呼ばれる玉虫の羽を素材にした作品などを発表。光の加減で色合いや輝きが変化する玉虫の羽は古くから装飾に用いられてきたが、豊海はフィボナッチ数列を応用することで、装飾的ではなく、自然が生み出す合理的で秩序立った美しさを構築した。新作を中心に約10点が並ぶ。