EXHIBITIONS

令和3年度国立美術館巡回展 国立西洋美術館コレクションによる

山形で考える西洋美術

<ここ>と<遠く>が触れるとき

2021.07.17 - 08.27

オーギュスト・ロダン 青銅時代 1877(原型)、松方コレクション、国立西洋美術館蔵 撮影=上野則宏

新海竹太郎 ゆあみ 1907(原型)、1986(鋳造) 山形美術館蔵

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ 夜明けの目覚め 1877-78 国立西洋美術館蔵

クロード・ロラン(本名クロード・ジュレ) 踊るサテュロスとニンフのいる風景 1646 国立西洋美術館蔵

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 少女 1878 国立西洋美術館蔵

 令和3年度国立美術館巡回展として、国立西洋美術館のコレクションによる展覧会「山形で考える西洋美術――〈ここ〉と〈遠く〉が触れるとき」が開催されている。

 国立美術館は毎年度、各館の持ちまわりで自館のコレクションの巡回展を開催してきた。しかし本展は、これまでの「国立美術館巡回展」の慣習や形式を押し拡げた実験的な試みとなる。

 デューラー、ヴェロネーゼ、エル・グレコ、フラゴナール、ドラクロワ、モネ、ロダン、セザンヌ、ル・コルビュジエなど、ルネサンスから20世紀にかけて活躍した作家たちの国立西洋美術館所蔵・寄託の優品が紹介されるだけではない。同館のコレクションが随所で山形美術館の所蔵作品、その他の機関や個人蔵の資料などと併せて展示されることで、山形の様々な記憶と絡みあい、その地でだからこそ見えてくる西洋美術の在り方を、新たに探っている。こうした試みは、目下のコロナ禍において移動や旅をするのが難しく、離れた土地の人や事物に触れづらいなかでも、「ここ」から、いくつもの「遠く」の時空を想像することが大切だというメッセージともなっている。

 その導入となるのは、国立西洋美術館の顔ともなっているロダンの彫刻と、山形出身の彫刻家・新海竹太郎が明治期に行った渡欧留学の記憶との交叉だ。留学前の新海は、現在の国立西洋美術館が建つ東京・上野公園から近い谷中に住み、彫刻を学んだ。この展覧会では、新海が生きていた時代に、もしロダンの作品などが多く所蔵されている国立西洋美術館がそこにすでにあったなら、という想像を来場者一人ひとりに促しながら、美術館の成立史やコレクション形成史を詳しく紹介する。また会場外には、今年、山形美術館に寄贈されたばかりの梅津庸一の作品が展示されている。それらが展覧会に応答を投げ返しているかのような関係を美術館内に生む。

 この展覧会はさらに、国立西洋美術館からの出品作はほとんどそのままに、2021年9月10日〜10月24日に高岡市美術館(富山)で開催される「高岡で考える西洋美術――〈ここ〉と〈遠く〉が触れるとき」へと変形され、山形とは異なる作品や資料の組み合わせを通じて、別の展覧会に組み替えられる。