EXHIBITIONS

テオ・ヤンセン展

2021.07.03 - 09.12

テオ・ヤンセン アニマリス・ムルス 2017 ©︎ Theo Jansen

「テオ・ヤンセン展」が熊本市現代美術館に巡回。本展では、全長10メートルを超えるストランドビーストを含む10作品以上を紹介し、実際に動く様子も会場で体感できる。

 風を動力源としてオランダの砂浜を疾駆する「ストランド(砂浜)ビースト(生命体)」。ボディ全体は黄色いプラスチックチューブで有機的に造形され、物理工学を基盤とした、生き物を思わせるほどに滑らかに動く作品は、オランダのアーティスト、テオ・ヤンセンによって故国の海面上昇問題を解決するために生み出された。

 テオ・ヤンセンは1948年オランダのスフェべニンゲン生まれ。デルフト工科大学にて物理学を専攻し、75年に画家に転向。90年、風の力で動く「ストランドビースト」の制作を開始し、アートと科学を融合したその作品から「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも称される。

 作者の亡き後も自立して砂浜で生き延びることを目指し、ストランドビーストは歩行、方向転換、危険察知などの機能を備え、様々な環境に適応していくためのシステムを獲得していく。生と死を繰り返し、遺伝子と遺伝情報を受け継ぎながら進化し続けてきた生命体は、芸術と科学という既存のカテゴリーを横断し、新たな可能性を私たちに提示する。

 本展の主な出品作は、プロペラを備え、高速で横に歩行できる《アニマリス・リジデ・プロペランス》(1995/タピディーム期 1994–1997)、「知覚する」という意味の「ペルシピエーレ」を持ち、水を感知し、方向転換も可能な《アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス》(2006/セレブラム期 2006–2008)、大海原を航海する帆船をモチーフとし、胴体が連結された構造の《アニマリス・プラウデンス・ヴェーラ》(2013/アウルム期 2013–2015)など。

 それぞれのストランドビーストには「アニマリス」(英語で動物を意味する「animal」とラテン語で海を意味する「mare」の組み合わせ)というヤンセンの造語から始まる名前が冠され、また、進化するビーストはその構造や機能によって分類され、それをもとに時代名がついている。