EXHIBITIONS

闇をまなざし、光にふれる。

児玉靖枝・西條茜・牡丹靖佳・吉岡千尋

2021.05.11 - 07.24

左より、児玉靖枝《ambient light - flower》(2000)、西條茜《melting point》(2015)、牡丹靖佳《Seesaw》(2020)、吉岡千尋《muqarnas 36》(2020)※すべて部分、撮影= 来田猛

 児玉靖枝、西條茜、牡丹靖佳、吉岡千尋によるグループ展「闇をまなざし、光にふれる。」が開催される。

 本展で紹介する4人のアーティストの表現の基底には、存在の表裏をなす光と闇への意識、そして、そこに内包されるある種の「伝わらなさ」が横たわっている。

 児玉靖枝は初期の精緻な静物画から抽象期、抽象と具象の境界を往還する絵画表現まで、一貫してものが存在することの本質を探り、またその反照として「いま、ここにいる自分」、そして自らと対象を包む世界への眼差しをとらえようとしてきた。

 陶芸を主なメディアとする西條茜は、確かなかたちを有すると同時に、空虚な内部空間を包み隠す「表面」としてのやきものにつきまとう虚構性に着目。さらに、そこに私的な物語や他者の歴史などの目に見えない要素を重ねることで、器物という空間的存在に時間軸を組み込んだ独自の世界観を提示している。

 牡丹靖佳は、日常の風景や事物を、色やかたち、筆触といった絵画言語に置き換え、それらのあいだに結ばれる関係と対話しながらイメージを連鎖させることで、「何か」の予兆と余韻に満ちた絵画世界を表現。近年には、色そのものの自律的な働きに焦点を当て、闇のなかで鋭敏になる触覚や視線の動きに呼応して浮かび上がる流動的な色彩の世界を反復や対称というルールのもとに描き出したシリーズがある。

 吉岡千尋は、庭に咲く薔薇やイコンの聖人がまとう衣装など、日常や旅先で目にした光景を主な主題に絵画を制作。自らが知覚した事物の印象をそのままの姿と質感で画布のうえで可能な限り再現すべく、グリッドを用いて「写し描く」。その過程で浮かび上がる現実と認識のズレや記憶の空白、また知覚ではとらえきれない要素をも画面につなぎとめ、光と闇が交差する絵画空間を生み出している。

 人々が日常と生命の儚さを改めて知るいっぽう、二極化する価値観やわかりやすさへの偏重を余儀なくされるいまの世界で、光と闇の狭間にあって言語や意味に回収されることのない「伝わらなさ」を掬い取り、存在することの本質、光と闇の向こうから放たれる「もう一つの光」にふれようとする4人の試みに目を向けてほしい。

※緊急事態宣言発令中、観覧は事前予約制。
前日までに、電話またはメールにて要予約(受付時間は11:00〜18:00まで。日月祝休廊)。