EXHIBITIONS

リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4

「リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4」展示風景より All Artworks © Artists

アンドロ・ウェクア W. Portrait II 2017 © Andro Wekua

リタ・アッカーマン In Orange Light, after Mama, Immortal Spirit 2021 © Rita Ackermann

「リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4」展示風景より All Artworks © Artists

「リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4」展示風景より All Artworks © Artists

「リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4」展示風景より All Artworks © Artists

「リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア:Chapter 4」展示風景より All Artworks © Artists

リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア 共作アートブック『Chapter4』

リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア 共作アートブック『Chapter4』

リタ・アッカーマン&アンドロ・ウェクア 共作アートブック『Chapter4』

 リタ・アッカーマンとアンドロ・ウェクアによる2人展「Chapter 4」が、ファーガス・マカフリー東京で開催されている。

 ソビエト理想主義の崩壊、体制下における抑圧、祖国からの亡命、移民としての経験を共有する2人のアーティストは、ゲオルク・バゼリッツやジグマー・ポルケと並ぶ「東部」アーティスト勢に数えられる。

 ウェクアは、動物やヤシの木、物思いに沈む青年、見放された場所のイメージのコラージュを、マーク・ロスコの色遣いを彷彿とさせる鮮やかなピンク、紫、アシッドイエロー、ターコイズ、マゼンタの層の下へと徐々に消していき変容させる。一見活気に満ちた色彩には、矛盾する必死さ、絶望が結びついている。作家のもっとも強い関心である肖像画、自画像は、疎外感と思慕の念をささやいているかのようで、見るものに不安感を与える。人物画にあるはずの「確かさ」は失われており、アイデンティティはいくつもの要素が混ざり合っているように多義的で、曖昧さを内包し、意味が置き換えられ、明白な真実は回避されている。

 アッカーマンの作品も同様に、既存のイメージに層を重ね、多くの場合でそこには相反する要素が共存しているように映る。「Do’s and Don’ts (すべきこと、すべきでないこと)」(2008〜09)のシリーズでは、雑誌、本のコピーに掲載されるモンタージュの切り抜きでキャンバスを構成し、そこにグラファイトとオイルクレヨンによる線、シルエット、テクスチャーを足していくことで、引用されたイメージと自身の生み出したイメージとの境目を曖昧にしている。過去15年間「Nurses」「Sisters」 「Mamas」などのシリーズに登場する女性たちはステレオタイプを無視し、作家自身に似た風貌の、大きな瞳のマンガのキャラクターに置き換えられた「彼女(she)」 は謎めいた静けさと無口さをたたえている。

 2002年、キュレーターのジャンニ・ジェッツァーを介して良き友人となった2人は、ファックスで制作プロセスを送り合い、それはすぐにZINE『Chapter1』の自費出版、その後『Chapter2』『Chapter3』(Nieves、スイス)の出版へと発展していった。写真、音楽、詩、日常会話に触発される2人は、電話、留守番電話、携帯のメッセージ、Eメール、画像の交換など様々な方法を通してクリエイティブなやりとりを続け、本展の開催と今回のカタログ『Chapter4』を出版するに至った。

 本展では、長年にわたる同志であり、それぞれが確立した強いパーソナリティーを持つ作家2人による、絵画とコラージュ作品(2008〜)を展示し、20年以上にわたって続けられる対話について明らかにする。