EXHIBITIONS

小松実紀「色づく輪郭」

艸居アネックス
2021.03.05 - 03.27

小松実紀 包 –血– 2021 ガラス H31×W45×D45cm

小松実紀、胞VI 2020 ガラス H21×W10×D10cm

小松実紀、内臓 –へその緒II– 2020 ガラス H41×W33×D15.5cm

小松実紀 吸う 2021 ガラス H19×W21.5×D21.5cm

 ガラス作家・小松実紀の初個展「色づく輪郭」が艸居アネックスで開催される。
 
 小松は1996年新潟県生まれ。19年に秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻を卒業し、現在、東京藝術大学美術研究科工芸専攻陶・磁・ガラス造形研究室修士課程に在籍。主にガラスの透明性を特徴とする作品を制作してきた。

「高温でとろりと溶けたガラスは内臓や血液といった人間の肉体的な存在、冷えて固まった壊れやすいガラスの儚さや緊張感には心の繊細さや脆さという人間の精神的な存在を感じる」と語る小松。作品制作中に生じる「いったい自分は何者なのか」「人間とは何なのか」という問いから派生する、「自分のことは自分が一番わかっているつもりだけど、本当にそうなのだろうか」ということに気づいたとき、自身を把握できていない不安が沸き起こるという。

 しかし、人間的な二面性を帯びたガラスという素材を扱ううちに、徐々に自身の人間としての輪郭が色づき、濃くなり、作家自身に「いまここにいる」という確かな存在感がわかってくる。こうした自身の存在の再認識により、存在に対する小松の不安は再び小さくなり、ガラスによる真っ白な何もない空間・世界をつくり上げること、人間の輪郭を色濃くすることで、自身の存在を確かめてきた。そして自身に対する問いの答えを探すことが自身における制作の目的ではないかと考えるようになった。

 本展では、人間の存在や奥に潜む自己ではとらえ切れない何かを、色づくガラスに映し出した新作17点を発表。透明なガラス作品に加え、白色の色味を持った作品も展示される。

 これまでとまったく異なる技法を用いた新シリーズでは、小松が透明なガラス作品の制作で感じていた人間の存在以外に、優しさや柔らかさ、身体を覆う皮膚のような表情が作品の一部として加わり、さらに作家の探し求める人間の輪郭が色づいている。ガラスの性質、色を用いて人間とは何かを探求しようとする小松の作品は、一変した日常を生きるいまの私たちに、人間の存在とは何かを考える機会を与えてくれるだろう。