EXHIBITIONS

豊田有希写真展

あめつちのことづて/令和2年7月豪雨REBORNプロジェクト

2021.01.20 - 04.04

集落で最後の一軒になった家の田植え 豊田有希『あめつちのことづて』より

 豊田有希は1987年生まれ、熊本市出身の写真家。その土地の風土や暮らしを見て得るだけでなく感じ得ていきたいと、住んでいる地域の周辺を主なフィールドとして撮影を行い、潜在化する人権や差別など社会問題への意識を根底にもちつつ、土地や人物の魅力をとらえることを目指している。

 豊田は「山間地、半数に水俣病」という1枚の新聞記事を見たことをきっかけに、芦北町黒岩地区に通い、その後、水俣市に移住。2016年から農作業の手伝いなどをしながら撮り続けた写真を「あめつちのことづて」シリーズにまとめる。

 かつて、海で獲れた魚は山へ、山で採れた作物は海へ、互いに結う暮らしがあった。しかし、この行き交いが集落に水俣病をもたらし、その被害が明らかになったのは、公式確認から半世紀以上が経った2010年代のことだった。

「あめつちのことづて」シリーズは、畑仕事や祭り、食卓、ポートレイトなど、芦北町黒岩地区と人々を撮影したもの。時代の波に翻弄されながらも、昔ながらの暮らしをいまも変わりなく淡々と続けている集落の姿を写している。

 本展では、未発表作品を含めて「あめつちのことづて」シリーズを再構成し、展示。また豊田が中心となって進める「令和2年7月豪雨REBORNプロジェクト」の活動も紹介する。

 同プロジェクトは、令和2年7月に熊本を襲った豪雨で水損被害を受けた、八代市坂本町の古い写真ネガをクリーニングしてデジタル化・保存するとともに、再プリントして公開することで、坂本という土地の記憶を多くの人と共有する試み。今回はプリント展示のほか、復活した水損写真やネガをまとめた記録写真集を会期中に発行する。