山形一生 個展「Fasten your seat belt」

　山形一生は、生物飼育やテレビゲーム、インターネットなどでの経験に基づきアート作品を手がけるアーティスト。その5年ぶりとなる個展「Fasten your seat belt」がTAV GALLERYで開催される。

　山形は1989年埼玉県生まれ。ティム・バーナーズ=リーが発明したWWW（ワールドワイドウェブ）以降のインターネットカルチャーから影響を受け、空港や旅に関係するモチーフを点在させたアート作品や映像などを制作。山形の作品はエキゾティシズムや移動制限化における哀愁さを彷彿とさせるいっぽう、そこには網膜から取りこぼされるような情景や植物のもつ時間軸などが用いられ、実存のありかと表現の固有性が象徴化されている。

　また今年、山形はキュレーション展「パンゲア・オン・ザ・スクリーン」において、現実空間で行われる展覧会と、インターネット上でのアーカイヴ、そして記事や図録による補填という3つの鑑賞体験を大陸に見立て、それぞれの鑑賞体験の優位性を地続きなものにすることを構想。「データを現実の物質と同じくして永劫的な価値を成立させたい」という作家の挑戦がかたちとなった。

　この試みを経て本展では、山形によって選出されたプリント作品とそのイメージに関連する複数の素材によって構成された映像作品を公開。人やものの移動が制限されるいま、イメージの流通がいかに私生活や日常に反響されうるか、またそのイメージの流通がもたらす認知によってつくられる現実について、山形が演出するナラティブが展開され、ものや情報の「移動」の真意が問われる。