EXHIBITIONS

小宇宙の精華

インド宮廷絵画―畠中光享コレクション―

2020.09.26 - 11.08

楽器を持つ女 キシャンガル派 1760頃

タージ・マハルに詣でるオーランガゼブの孫のシュリ・モハマッド・シャー ブンディールカンド地方ダティア派 1720頃

マハ・バーラタよりのワンシーン メワール派 1670-80

 インドの宮廷を彩った「インド細密画」を本格的に紹介する初の展覧会が、岡崎市美術博物館で開催される。

 「インド細密画」とは宮廷絵画であり、16世紀後期〜19世紀前期にかけてムガール帝国の宮廷やインド中部から西北部の武人階級であるラージプトの藩主国の画工房で描かれた絵画のこと。インドには、「1枚の絵と観る人は一対一で向き合って対話するもの」という絵画観があり、小さな画面に絵が描かれた。

 インドの宮廷では細密な画面に描かれた美しさだけでなく、奥にある内容や意味、心を読むといった絵を鑑賞する術が、音楽や詩歌と同じく王侯貴族の教養とされ、「インド細密画」は宮廷人の嫁入りにも持参される重要なものだった。

 本展では、日本画家でインド美術研究者の畠中光享が約半世紀の歳月をかけて調査研究のために収集した、インド細密画すべての流派を日本で唯一網羅する「畠中コレクション」を初めて一挙に紹介。西洋化と時代の変化によって消滅した、本国でもまとめて見ることが珍しいインド細密画の貴重な資料が揃う。 

 西洋やアジア諸国が入り乱れ、混沌にあった近世インドで生まれた、歴史・宗教・文化を凝縮した細密画。小さな画面に広がる、深く豊穣な世界を楽しみたい。