EXHIBITIONS

リチャード・セラ展「ドローイング」

リチャード・セラ展「ドローイング」展示風景 撮影=丸尾隆一

リチャード・セラ オリエント #12 2018 © 2020 Richard Serra / Artists Rights Society(ARS), New York; Photograph by Rob McKeever

リチャード・セラ オリエント #3 2018 © 2020 Richard Serra / Artists Rights Society(ARS), New York; Photograph by Rob McKeever

リチャード・セラ展「ドローイング」展示風景 撮影=丸尾隆一

リチャード・セラ展「ドローイング」展示風景 撮影=丸尾隆一

 アメリカを代表するアーティストのひとり、リチャード・セラの個展がファーガス・マカフリー東京で開催。本展では新作のドローイング・シリーズ「オリエント」の展示を軸に、日本語と英語2ヶ国語で作品の全容を伝えるカタログ、短編動画、そして多岐にわたるバーチャル・イベントを通し、日本の美学がセラへ与えた影響を考察する。

 セラは1939年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。70年代より鉄を素材とした彫刻作品を手がけるようになり、81年にニューヨークで発表した作品《傾いた弧》がもっとも知られている。また日本との関わりは深く、70年の「人間と物質展」展では、自身初となる野外彫刻《To Encircle Base Plate(Hexagram)》を出展。この日本訪問はセラに強い衝撃を与え、後に美術批評家のハル・フォスターとのインタビューで、「自身の風景を扱う作品と彫刻作品の両方で、厳格な日本庭園が知覚範囲内における時間の探求に影響を与えた」と話している。

 94年には国立国際美術館(大阪)で、セラが彫刻と並行して制作してきた紙を支持体とする作品の回顧展「リチャード・セラドローイングと版画」が開催。そして同年、セラは日本でもっとも権威ある賞のひとつである、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。

 本展は、セラにとって約20年ぶりとなる日本での個展。初公開となる新作のドローイング・シリーズ「オリエント」(2018)は、作品が制作されたニューヨーク・ロングアイランドの北端に位置するオリエントから題名が取られている。

 本シリーズは、作家の動作・作業と素材のあいだのダイナミックな相互作用によって生み出されたもの。セラが長きにわたって取り組んできた重量とプロセス、そして言葉と身体の位置づけによる強力な力に対する考察を体現し、ドローイングの素材の物理的性質を明らかにする。

 展覧会の開催に際し、ファーガス・マカフリーは「オリエント」シリーズの全容についてのカタログを制作。もの派研究の第一人者である峯村敏明によるエッセイ、作家本人による2001年プリンストン大学でのベルナップ・レクチャー「Belknap Lecture in the Humanities」の原稿を合わせて掲載する。加えて、セラーのドローイング制作と日本滞在についての年代記的な短編動画を公開する。