EXHIBITIONS
多和圭三 多摩美術大学退職記念展
40年以上にわたり、鉄を素材に制作を続ける彫刻家・多和圭三の、多摩美術大学退任記念展が開催。本展では、同大学に就任した2009年から現在に至るまでの11年間に制作された作品を、新作を中心に展観する。
多和は1952年愛媛県生まれ、80日本大学芸術学部芸術研究所修了。主に鉄を素材とした作品で人間と物質の関係を探りながら、人を含む「もの」のあり方を制作のなかで追求してきた。近年の個展に、「鉄を叩く−多和圭三展」(足利市立美術館ほか、2010〜11)。展覧会に、「空間に線を引く 彫刻とデッサン展」(平塚市美術館ほか、2019)などがある。
多和が長年向き合っている鉄は、小規模でもその重量感と硬さで、「ある」ことを顕示するのに充分な素材。しかし多和の作品からは、鉄の実在性を認めるいっぽうで、その表裏をなす虚無へも同等の意識を向けていることがわかる。多和は、いつかは消えるすべての「もの」を慮り、存在することの難しさや厳しさ、そして尊さを作品としてそこに「ある」ことを伝えている。
本展では、鉄をはじめ、大谷石を使った作品や、過去10年ほど取り組む鉄のスクラップによる新作3点を展示。島のような不思議なかたちをした新作は、これまでの制作で余分に出た端材の鉄、または用途のない廃材からつくられたもので、鑑賞者からは容易に見ることのできない接地面(底面)が研磨され、鏡面となっている。この表現は、多和がここ数年で意識的に行っているアプローチで、「もの」の実在性を強調しながらも、他を映し出す鏡面(鏡像)をつくることで、その実体を消すという対照的な試みを見ることができる。
多和にとってはひとつの節目となる本展。これまでの仕事を振り返りつつ、作家のこれからのさらなる展開に注目したい。
多和は1952年愛媛県生まれ、80日本大学芸術学部芸術研究所修了。主に鉄を素材とした作品で人間と物質の関係を探りながら、人を含む「もの」のあり方を制作のなかで追求してきた。近年の個展に、「鉄を叩く−多和圭三展」(足利市立美術館ほか、2010〜11)。展覧会に、「空間に線を引く 彫刻とデッサン展」(平塚市美術館ほか、2019)などがある。
多和が長年向き合っている鉄は、小規模でもその重量感と硬さで、「ある」ことを顕示するのに充分な素材。しかし多和の作品からは、鉄の実在性を認めるいっぽうで、その表裏をなす虚無へも同等の意識を向けていることがわかる。多和は、いつかは消えるすべての「もの」を慮り、存在することの難しさや厳しさ、そして尊さを作品としてそこに「ある」ことを伝えている。
本展では、鉄をはじめ、大谷石を使った作品や、過去10年ほど取り組む鉄のスクラップによる新作3点を展示。島のような不思議なかたちをした新作は、これまでの制作で余分に出た端材の鉄、または用途のない廃材からつくられたもので、鑑賞者からは容易に見ることのできない接地面(底面)が研磨され、鏡面となっている。この表現は、多和がここ数年で意識的に行っているアプローチで、「もの」の実在性を強調しながらも、他を映し出す鏡面(鏡像)をつくることで、その実体を消すという対照的な試みを見ることができる。
多和にとってはひとつの節目となる本展。これまでの仕事を振り返りつつ、作家のこれからのさらなる展開に注目したい。