EXHIBITIONS

浅野竹二の木版世界

2017.05.20 - 07.02

浅野竹二 食卓の猫 1978

浅野竹二 食卓の猫 1978

浅野竹二 南円堂雨 1938

浅野竹二 猫と鳥 1977

 関西では高い評価を受けてきたユマニスト木版画家・浅野竹二(1900-1999)の世界を関東圏で初めてまとめて紹介する展覧会が開かれる。

 京都生まれで今から約20年前に京都に没した浅野は、当初は日本画家を志し、やがて木版画家に転向、明朗で光にあふれた独特の全国名所絵で知られるところとなった。大阪、京都、東京など、温かみのある多色木版画の全国名所絵シリーズは、ちょっとした全国漫遊や、楽しい小旅行気分を思わせる。その後は自分で描き、彫り、摺る創作木版画を好むようになり、浅野の作品世界は大きく変化。誰も見たことのないような柔らかく、穏やかで、春の日差しのような世界を版木のなかにつくり出していった。

 昭和35年、アメリカの社会派の画家ベン・シャーンは、独特の石版画世界を作り出す画家だったが、突如京都の浅野のアトリエを訪ね、浅野の作品を賞賛。二人の交流が始まり、この出会いが、浅野の独自の世界の創出にさらなる力を与えた。シャーンの作品は浅野の作品に、幼児性とも取れるほどの単純さ、大胆さ、純粋さ、そして愉快さをもたらした。

 しかしここには、独特の人生哲学が含まれている。つまり、生きることを人間を中心に考えるのではなく、動物たちに人も含めて、命たちの営みとして、命の「ひとときの輝き」として愉快さを持って語る。浅野の作品にはあっけらかんと、なんの屈託もなく、心からの喜びの笑い声として生きることが描かれている。