小川泰「考える猿 / The Monkey thought.」

　YOD Galleryでは、小川泰の個展「考える猿 / The Monkey thought.」が開催される。

　2013年のバイク事故をきっかけに制作を再開した小川は、2次元である平面空間に3次元の空間を創出することを絵画と定義し、次元の超越から平面の可能性を拡張すべく実践してきた。その創作の原点であり、リアリティの表現である「落書き」を時系列もバラバラに画面上で再構成することで、アナグラムにも似た意味の変容と絵画の新たなイメージを生み出している。

　小川がもうひとつの核としているのは、20世紀末頃に隆盛を極めた「セカイ系（＊）」だ。「落書き」「セカイ系」の2つの要素で描かれる作品は、エアブラシを用いて描かれ、一見デジタルにも錯覚する多元的な絵画空間がつくり出されている。

　本展では、2014年頃に用いていた手法である、ドローイングを画面上でコラージュした作品を中心にした新作を発表する。

「絵を描き作品を残すこと、それをメタ視点で鑑賞する事。永遠と繰り返される壊滅しなかった世界の後のセカイ系と、寛解しない時の病としての中二病。この曖昧な現実の物語が続いていくことが実は幸せなのである。今日もまた変わらない日常を時空を超越して定点観測していくのだ（作家ステイトメントより一部抜粋）」。

＊──「一人語りの激しい」「たかだか語り手自身の了見を『世界』という誇大な言葉で表したがる傾向」「主人公（ぼく）とヒロイン（きみ）を中心とした小さな関係性（「きみとぼく」）の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと。