EXHIBITIONS

津田青楓 図案と、時代と、

2022.06.18 - 07.18, 2022.07.20 - 08.14

津田青楓『うづら衣』(山田芸艸堂)より 1903(明治36) スコット・ジョンソン氏蔵 © Rieko Takahashi

津田青楓『うづら衣』2巻(山田芸艸堂)より 1903(明治36) スコット・ジョンソン氏蔵 © Rieko Takahashi

津田青楓『青もみぢ』1巻(本田雲錦堂)より 1899(明治32) 山田俊幸氏蔵 © Rieko Takahashi

 渋谷区立松濤美術館が展覧会「津田青楓 図案と、時代と、」を開催する。

 工芸品などの下絵とされていた「図案」が、必ずしも何かに応用されるためのものでなく、また「絵画」とも異なるものとして存在するようになったのは、明治から大正時代のこと。明治時代にヨーロッパの美術やデザインが日本でも広く知られるようになると、それまでの伝統的な図案から脱却し、独自の創意をもって考案しようという機運が高まった。職人の仕事とされていた図案制作には、やがて画家も携わるようになり、その芸術化が試みられた。

 本展は、明治30年代に京都で多くの図案集を出版し、大正時代には夏目漱石らの本の装幀も手がけた津田青楓(つだ・せいふう、1880〜1978)を軸に、図案集と図案に関する作品を紹介する。

 図案の変革期と同じ頃、京都に生まれた青楓は明治・大正・昭和という目まぐるしく変化する社会のなかで、日本画、洋画、工芸、書など幅広い分野で活躍。1904(明治37)年には、青楓自身も図案の研究会を結成し、日本画の師である谷口香嶠(たにぐち・こうきょう)や、当時、京都に新たな美術やデザインをもたらした洋画家の浅井忠を顧問に迎えて雑誌の刊行も行っていた。その前年に刊行した図案集『うづら衣』では「自己は自己の図案をつくらねばならん」と、制作にかける意気込みを語っている。

 本展は、図案集をはじめ、本の装幀や刺繍など、明治から大正時代に至るまでの青楓の図案の仕事を、日本画と洋画とともに展示する「青楓図案万華鏡」、青楓の師・谷口香嶠や、絵画と工芸の分野でも活躍した神坂雪佳、日本にアール・ヌーヴォーを持ち込んだ浅井忠ら、青楓の影響を与えた人物などからその図案制作の背景に迫る「青楓と京都図案」、そして、パリ留学で学んだ青楓が帰国後に挑戦した、素朴ながらも新しい表現に焦点を当てる「青楓と新しい試み」の3章で構成される(会期中、一部展示替えがあり)。

 明治から大正、そして昭和へ、新しく流入した文化や流行のもと、創作への強いエネルギーに満ちた時代につくられた図案は、現代の私たちの目にも新鮮に映ることだろう。青楓の作品を通し、職人の仕事から美術家の作品へと昇華された図案の世界を楽しみたい(土日祝・最終週は日時指定予約制。詳細は公式ウェブサイトへ)。