ART WIKI

東京藝術大学(東京美術学校)

Tokyo University of the Arts

 東京美術学校と東京音楽学校が合併する形で1949年に創立された日本で唯一の国立芸術大学。前身となった東京美術学校は、日本初の官立美術学校として、1883年の工部美術学校の閉校を受けて1887年に創立された。当初は日本画科と木彫科のみで構成されていたが、西洋画への関心の高まりを受けて、1896年に西洋画科と図案科が新設される。1920年代には受験者数の増加から入試競争が激しさを増してゆき、それに応じるかたちで教授ら個人による美術研究所が開かれるようになり、現在の美術予備校の先駆けがつくられた。

 東京藝術大学として再出発した際、美術学校は美術学部になり、絵画科・彫刻科・工芸科・建築科・芸術学科の5科編成からスタートした。1975年に工芸科が改組され、工芸科とデザイン科が設置、1999年には先端芸術表現科が新設されている。また2005年には大学院映像研究科が、2016年には大学院国際芸術創造研究科のアートプロデュース専攻と美術研究科のグローバルアートプラクティス専攻がそれぞれ新設されるなど、1999年以降、科や専攻の新設が相次いで行われている。この背景には、絵画や彫刻などメディア別に分けられていた科の編成に対する反省が次第に高まってゆく中で、いかにしてメディアの多様化に応えるかという課題に芸術大学が取り組まざるをえない状況が生まれてきたという背景がある。

 また1920年代の東京美術学校時代から、基本的に上昇し続けていた受験者数は2000年代に入って初めて本格的な下降を見せ始め、現在もその勢いは留まる様子がない。その余波のひとつとして、受験生の増加から1920年代に誕生した美術研究所(美術予備校)が、2010年代以降は反対に閉校を余儀なくされる予備校が出はじめている。

文=原田裕規