ARTISTS

リチャード・ロング

Richard Long

 リチャード・ロングは1945年イギリス・ブリストル生まれ。ランド・アートを代表するアーティストのひとり。ウェスト・オブ・イングランド・カレッジ・オブ・アート(現・西イングランド大学)で学んだ後、ロンドンのセント・マーティンズ美術学校を68年に卒業し、ドイツ・デュッセルドルフのコンラート・フィッシャー・ギャラリーで初個展を開催する。初期には、自然を歩いた自身の痕跡を記録した写真作品を発表。その後はランド・アートをはじめ、インスタレーションやペインティングなど表現の幅を広げつつ、一貫して自然と人間の関係性をテーマに制作を行う。

 ランド・アートにおいては自ら歩行し、自然のなかでの行動を写真やテキストに記録。石や木を地面に整然と配置し、自然と自らの身体の関わりのなかで作品を生み出していく。アメリカに見られる大規模なランド・アートとは異なり、自然のなかに取り込まれる慎ましやかな規模が特徴。サハラ砂漠を舞台とした《サハラ・ライン》(1988)では、砂上に岩石を直線状に並べ、人間の営みが巨大な自然の一部であることを示す。70年代から石や流木を使ったインスタレーションを展開し、80年代には壁に泥を塗る「マッド・ペインティング」に着手。展示場所が屋内に移っても、自然と人間の関係性がつねに意識されている。日本では、96年に初回顧展「リチャード・ロング 山行水行」が京都国立近代美術館、世田谷美術館で開催。香川県・直島のベネッセハウス ミュージアムにサイト・スペシフィック・ワークが恒久設置されている。89年にターナー賞、2009年に第21回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)を受賞。