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カジミール・マレーヴィチ

Kasimir Malevich

 カジミール・マレーヴィチは1878年、現ウクライナ・キエフ生まれ。労働者階級の家庭で育ち、モスクワの絵画彫刻建築学校で学んだ。1915年、イタリアの未来派、キュビスムの影響のもとで、絶対主義とも呼ばれる「シュプレマティズム」を創始。自然界において完璧には存在しない正方形、幾何学的形態によって純粋な感情を表現しようとした。初期作の黒の正方形から出発したシュプレマティズムの追究の末、代表作のひとつ《白に白》(1918)を生み出し、白地に白の正方形を描く抽象画にたどり着く。26年に論文「無対象の世界」を発表。感情が現実・物質より優位にあるという自身の考えを言語化している。教師としての一面も持ち、ベラルーシやキエフなどの美術学校で後進の育成にも貢献。究極の抽象画を追い求めたマレーヴィチだが、退廃芸術の取り締まりが厳しいスターリン政権下にあって、具象の表現に戻らざるを得なかった。35年没。ロシアの構成主義やピート・モンドリアンが提唱した新造形主義(ネオプラスティシズム)などの動向は、未来派やキュビスム、そしてシュプレマティズムを経由して発展しており、マレーヴィチ自身は晩年に不遇の時代を過ごすも、ソ連崩壊後に再びその活動が評価されている。