EXHIBITIONS

6つの個展 2020

2020.11.03 - 12.20

須藤玲子 扇の舞 2020 コンプトン・ヴァーニー・アート・ギャラリー・アンド・パークでの展示風景 Fabric: Touch and Identity © Compton Verney, photography Jamie Woodley

一色邦彦 炎翔 2004

野沢二郎 風の羽根 2020

國司華子 来迎ノ図 2019

アビルショウゴ カタバミ 2007

塩谷良太 物腰(2015) 2015 「雨引の里と彫刻2015 りんりんロード」での展示風景

 茨城県近代美術館が企画展「6つの個展 2020」を開催。茨城にゆかりがあり、それぞれのジャンルで注目すべき活動を続けている作家6名、一色邦彦、須藤玲子、野沢二郎、國司華子、アビルショウゴ、塩谷良太を迎え、個展形式で紹介する。

 一色は1935年、現在の東京都北区生まれ。東京藝術大学彫刻科専攻科を修了し、68年より牛久市にアトリエを構える。早くから具象彫刻家として知られ、新制作協会を舞台に作品を発表してきた。66年に第9回高村光太郎賞、73年に第4回中原悌二郎賞優秀賞を受賞。ブロンズが主な素材の女性像を中心とした人物像は、ダイナミックで浮遊感を感じさせるような肢体の表現が目を引きつける。

 須藤は1953年石岡市生まれ。75年武蔵野美術短期大学工芸デザイン学部専攻科修了。84年にテキスタイルメーカー株式会社「布」の設立に参加する。日本の伝統的な染織技法から最先端の産業技術までを駆使してテキスタイルを制作し、日本のみならず世界各地で発表。近年の展覧会に、「こいのぼりなう!須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一によるインスタレーション」(国立新美術館、東京、2018)などがある。

 野沢は1957年現・常陸大宮市生まれ、82年筑波大学大学院芸術研究科修了。筆ではなく、ローラーやスキージ(幅広のヘラ)を用いて、油彩絵具の特性を活かしながらマチエール(絵肌)の多彩な表情を引き出す。絵具を塗っては削る作業を繰り返してつくり上げる堅牢な画面は、画家の試行錯誤の痕そのもの。制作のただなかで画家が思いもかけず見い出した「景色」は、見る者の感情や想像力に大きく訴えかける。

 國司は東京都に生まれ、1989年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程日本画専攻を修了。長くかすみがうら市を制作拠点とした。院展に所属し、茨城県が院展に設けている天心記念茨城賞の第11回(2005)の受賞画家。軽やかさと深みを兼ね備えた色彩と、日本画の顔料独特の質感が導くニュアンス豊かな國司の絵画世界は、親密さと幻想性を帯び、日常と非日常の「あわい」を感じさせる。

 アビルは1961年長崎県生まれ。94年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻を修了し、97年に富山ガラス造形研究所を卒業する。2004年北茨城市に転居。「ガラス」という素材の従来的なイメージを大きく逸脱した、ガラスと金属による抽象的な造形作品を制作している。彫刻の素材としてのガラスの可能性を追究しながらオリジナルの技法を編み出すことを試み、板ガラスを加工した、シャープで流麗な造形は近未来的な雰囲気を感じさせる。
 
 塩谷は1978年東京都生まれ。2003年多摩美術大学美術学部工芸学科陶専攻卒業、2005年筑波大学大学院芸術研究科デザイン専攻総合造形分野修了。現在は土浦市にて、陶による造形表現を行う。制作では、西洋のモダンアートと日本のやきものの間を行き来し、三次元(立体)と二次元(平面)の関係性や、かたちとその表面の図柄についての考察を続けている。

 6名の作家は40〜80代まで様々な世代に属しながら、デジタル時代において、それぞれのリアルな感覚によって世界に対峙し、手を介して「もの」としての作品を制作している。6つに区切られた展示室では、各々がどのように世界をとらえ、かたちある「もの」に昇華しているのかが見どころとなる。