特集
「現代」に向き合い続ける
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劇場をハブに多様な出会いをロームシアター京都は市が運営する公営の劇場。前身である京都会館のネーミングライツをローム株式会社が取得し、2016年にロームシアター京都として生まれ変わった。リニューアル後も世界水準の優れた作品を上演することはもちろん、劇場とアーティストが共同し新たなレパートリー作品を生み出すためのプロジェクト「レパートリーの創造」(2017~)や調査研究事業「リサーチプログラム」といった試みは国内の公立劇場ではめずらしい。
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設計は前川國男ロームシアター京都の前身・京都会館(1960年)は、ル・コルビュジエに師事した巨匠・前川國男が設計を手がけた。岡崎地域の周辺環境との調和を考慮し、水平線を強く意識した意匠で設計されており「戦後モダニズム建築の傑作」と高い評価を受けた。その後、建物の老朽化に伴い建築家・香山壽夫が改修設計を手がけ、2016年にロームシアター京都が開館した。香山が掲げた「時代ごとの新しい価値を、これまで築いてきた古い価値の上に重ねていく」というテーマは、建造物のみならずロームシアター京都の事業姿勢にも受け継がれている。
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開かれた劇場公演の有無にかかわらず、ロームシアター京都は日常的に人々が集まり、語りあうパブリックスペースでもある。1Fに位置する蔦屋書店では本を読みながらスターバックスコーヒーを楽しむことができる。とくにコンシェルジュの選書が光る「人文・社会」棚は必見。2Fへの階段を登ると開放感溢れるカフェ&レストラン「京都モダンテラス」があり、風景と旬の素材を使った料理、双方から京都の四季を味わうことができる。この自由な場に集う人と人との結びつきが、京都のまちにやがて新たな文化を生成するだろう。
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待望のリニューアル開館2020年3月21日にリニューアル開館を迎える京都市京セラ美術館(京都市美術館)。リニューアル後には、これまでの本館に加え、現代美術などを展示するための新館「東山キューブ」、新進作家を中心に発信する「ザ・トライアングル」、収蔵品を展示する「コレクションルーム」などの展示スペースを新たに備え、これまで以上に多様な美術を発信する。館長にはリニューアルの設計を手がけた建築家・青木淳が就任した。
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開館記念展は京都の美術と現代美術開館記念展「京都の美術 250年の夢」では、同館のコレクションの真髄である「京都の美術」を全国から集めて展示。文化庁をはじめ、宮内庁三の丸尚蔵館、東京国立博物館、京都国立博物館、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、東京藝術大学大学美術館などから出品される、伊藤若冲、曾我蕭白、円山応挙、竹内栖鳳、上村松園、堂本印象といった作家たちの400点を超える作品を、3部構成で紹介する。
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個展「杉本博司 瑠璃の浄土」
新館「東山キューブ」では、個展「杉本博司 瑠璃の浄土」を開催。かつて6つの大寺院が存在していた京都・岡崎。杉本は、その地に立つ京都市京セラ美術館で「仮想の御寺の荘厳」を構想するという。杉本はこの構想について、「現代と中世、何が変わったかというと浄土観。死に対する荘厳さが変わった、死に対して無関心になってしまった」と語り、そのメンタリティの変化、現代人にとって浄土とは何かを展覧会を通じて見せるという。大判カラー作品シリーズ「OPTICKS」が世界初公開されるほか、ヴェネツィアやヴェルサイユ宮殿での展示で話題となった《ガラスの茶室
曾我蕭白《群仙図屏風》右隻 1764年 文化庁蔵 重要文化財
杉本博司《ガラスの茶室 聞鳥庵》ヴェルサイユ宮殿での展示風景、2018年(C)Hiroshi Sugimoto. Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO, Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO, The image is from the exhibition “SUGIMOTO VERSAILLES” orgnaized by Palais de Versailles.