2023.7.9

0歳からティーンのためのミュージアム。ヤングV&Aに見るアート&デザイン教育の最先端

3年の月日と1300万ポンド(約23億8000万円)をかけての改装を終え、V&Aミュージアム・オブ・チャイルドフッドがヤングV&Aとして生まれ変わり、7月1日に再オープンした。紀元前2300年のシリアで使われていたとされるガラガラから現代のスポンジ・ボブやポケモンまで、収蔵品およそ2000点を展示しつつ、子供はもちろん大人も思い切り羽を伸ばして楽しめるユニークな場所となっている。

文=坂本みゆき

アーチ状の窓が美しい煉瓦の建築物は、1872年にオープンしたベスナル・グリーン博物館ために建てられたもの。地下鉄のベスナル・グリーン駅から徒歩2分の距離にある  © Luke Hayes courtesy of Victoria and Albert Museum, London
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美しさと開放感で満たされた館内

 エントランスを抜けると目の前には吹き抜けの巨大なスペースが広がる。子供たちはモザイクが張り巡らされた床に彼らの身長の半分くらいある大きなブロックを並べて遊び、奥のカフェは親子連れでほぼ満席。天窓からは心地よい自然光が差し込んでいる。まるでプレイパークのようで、一瞬ここがミュージアムであることを忘れてしまいそうになる。

装飾的な鉄骨やモザイクの床など、ヴィクトリア時代の建造物らしい装飾の館内 撮影=筆者

 イースト・ロンドンのベスナル・グリーンに位置するヤングV&Aは、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)によるイギリスで最初の子供たちのためのアートとデザイン、パフォーミングアートの博物館だ。美しく組まれた鉄骨に支えられたヴィクトリア時代の建物は開放的で、そこにぐるりと巡らされた2フロアの回廊が展示スペースとなっている。

 改装を手がけたのはAOCアーキテクチャーとデ・マトス・ライアンだ。ギャラリーのデザインを担当したAOCアーキテクトは10ヶ月に渡ってオープンスタジオを設けてキューレターらミュージアムのスタッフのみならず、地域に暮らす家族や子供たち、学校の教職員らのアイデアに耳を傾けながら作業を進めていったという。 

遊びとイマジネーションが広がる地上階