2023.11.13

ポーラ ミュージアム アネックスで「Plastic Revives」展が開催中。舘鼻則孝、野口哲哉らが再生プラスチックをアートにアップサイクル

ポーラ ミュージアム アネックスで、チャリティオークション「Plastic Revives」展が12月3日まで開催中。本展では、化粧品容器から再生されたプラスチックを用いて制作されたオリジナル作品や、ドローイングなど総勢19名のアーティストによる作品が展示・販売されている。

舘鼻則孝 Heel-less Shoes 2023 牛革、豚革、染料、再生ポリエチレンテレフタレート、金属ファスナー Photo by Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
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 ポーラ ミュージアム アネックスで、チャリティオークション「Plastic Revives」展が12月3日まで開催中。同館においてチャリティーオークションは4回目の実施となる。

 本展は、循環型社会の実現を目指すポーラ・オルビスグループが、再生素材活用の知見拡張を目的に、同社の強みでもあるアートと研究開発をかけあわせる試みとして実施されるもの。会場では「再生」をテーマに、同社の化粧品容器から再生したプラスチックを用いて制作されたオリジナル作品や、ドローイングなど総勢19名のアーティストによる作品が展示されている。さらに、これらの作品はオンライン上にてサイレントオークション(*1)および抽選にて販売される。

 出展作家は、イイノナホ、柏原由佳、鬼頭健吾、木村恒介、鈴木ヒラク、竹村京、舘鼻則孝、津上みゆき、中嶋浩子、中村弘峰、中村萌、 流麻二果、野口哲哉、福井利佐、増田セバスチャン、水野里奈、ミヤケマイ、横溝美由紀、渡辺おさむ。

野口哲哉 float 2023 再生ポリエチレンテレフタレート、樹脂
中村萌 Regrow Pots -family- 2023 再生ポリエチレンテレフタレート、アクリル絵具、油絵具、金砂、植物、その他
水野里奈 花が舞う 2023 キャンバスに油彩、刺繍糸、再生ポリエチレンテレフタレート

 本展の開催に際し編集部は、作品制作の素材となったラインストーンの開発から携わったという現代美術家・舘鼻則孝にメールインタビューを実施。ポーラ化成工業チームとの素材開発におけるやり取りやそのプロセス、本展のようなアーティストと企業における協業の可能性について話を聞いた。

──舘鼻さんの出展作品についてご紹介をお願いいたします。

舘鼻則孝(以下、舘鼻 「B.A(*2)」のボトルをリサイクルしてつくられた樹脂製のラインストーンを用いて、「ヒールレスシューズ」を制作することは、私にとって新しいチャレンジになりました。使用済みボトルが美しい半透明の黒色ラインストーンに生まれ変わったことには全く違和感を感じることもなく、初めからこのような素材であったかのような佇まいで作品として仕上がっています。また、私が制作に用いているレザーは、食肉牛の皮革を植物タンニンで鞣したナチュラルレザーで、本作は全体を通してアップサイクルによって生まれた作品とも言えるでしょう。

──今回のプロジェクトでは、ポーラ化成工業チームとの協業により、素材となるラインストーンの開発から携わられたとお伺いしました。その開発にあたってどのようなやりとりがあったのか、またラインストーンの特徴などについても教えてください。

舘鼻 ポーラ化成工業のチームとの対話のなかで、ラインストーンの形状を決定するまでの過程でも何度も試作を繰り返し、ラインストーンが「ヒールレスシューズ」の立体的な形状に貼り合わされたときの見え方などを含め、作品として仕上がった際のイメージを高めました。最終的には、私が普段使用しているクリスタルガラス製のラインストーンより、何倍も高さがある尖がった結晶のような形状に仕上げました。3Dデータの作成から始まり、実際の再生樹脂素材での形状試作を繰り返し、クリスタルカットの反射がもっとも綺麗に見える形状にたどり着くまでに数ヶ月を要し完成されました。

──開発を経て、自身の作品を制作する過程での気づきなどがあれば教えてください。

舘鼻 普段使用しているクリスタルガラス製のラインストーンでは、カット面の数が多い方が煌びやかに見える傾向にありますが、本作に使用している再生樹脂製のラインストーンでは、カット面の数を抑え、ある程度の面の大きさがあることによって、エッジが際立ちメリハリのある見え方を演出することができました。日頃の創作のなかでも様々な素材や伝統工芸技法などを扱って作品を作ることがありますが、本作での経験もそれらに似たような手仕事と革新的技術が掛け合わされたことで完成された作品だと感じています。

舘鼻則孝 Heel-less Shoes 2023 牛革、豚革、染料、再生ポリエチレンテレフタレート、金属ファスナー Photo by Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

──本展に見られるような、「アート×ポーラ・オルビスホールディングスの研究開発」の取り組みに対して、アーティストの目線からどのような可能性を感じますか。

舘鼻 今回のように革新的な技術が活用されたアップサイクルがアートとして表現されることは、現代社会にとってサステナビリティを身近に感じてもらえるという視点で、とても有意義なプロジェクトだと感じています。ポーラ・オルビスホールディングスは、様々な研究開発分野においても世界的に成果が評価されている企業のひとつでもあります。単に化粧品ブランドとして以上に、自社の得意分野を生かして私のような外部の作家ともコラボレーションができるということは、現代社会における新たなコミュニケーションの手段としても将来性を感じています。

*1──競りは行わず期間中に入札のみを非公開でおこない、最高額をつけた方が落札者となる形式。
*2──ポーラ化粧品のブランドのひとつ。