2023.6.24

森田子龍と大山エンリコイサムで思考する「反復と差異」。思文閣銀座で山峰潤也のキュレーション展が開催

思文閣銀座でインディペンデント・キュレーターの山峰潤也を招致した森田子龍と大山エンリコイサムによる展覧会「反復の圏域 -Repetitive Sphere-」が開催中。会期は7月8日まで。

大山エンリコイサム FFIGURATI #495 2023 Aerosol paint, sumi ink and latex paint on canvas 150×100cm Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio, Photo ©︎Shu Nakagawa
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 思文閣銀座のゲストキュレーターを招聘する展覧会シリーズ 「Ginza Curator’s Room」。その第4回目として、インディペンデント・キュレーターの山峰潤也を招致した「反復の圏域 -Repetitive Sphere-」を開催されている。会期は7月8日まで。

 本展は、前衛書を牽引した「墨人会」を1952年に結成して書の再解釈と独自の表現を志向した森田子龍と、ストリートアートの一領域であるエアロゾル・ライティングを分析し、その再構成から生まれた「クイックターン・ストラクチャー」を起点に活動を行う大山エンリコイサムによる二人展だ。

森田子龍 圓 紙にアルミ、泥、漆 額装 1969

 大山は1983年東京都生まれ。2007年に慶應義塾大学卒業、2009年に東京藝術大学大学院修了。2011-12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。これまでに大和日英基金(ロンドン)、マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)、神奈川県民ホールギャラリー、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(東京)などで個展を開催してきた。『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社)、『エアロゾルの意味論』(青土社)などの著作を刊行。2020年には東京にもスタジオを開設し、現在は二都市で制作を行なう。 

 森田は1912年兵庫県生まれの書家。名は清。上田桑鳩に師事し、書の革新を志し、井上有一らと墨人会を結成するとともに、書芸術誌「墨美」を創刊、長く編集主幹を務め、新しい書芸術のあり方を国内外に発信し続けた。京都市文化功労者。2000年に紺綬褒章。

 ふたりの作品には半世紀ほどの時間の隔たりがありながらも、書くことと描くこと、身体性とドローイングの関係など、多数の共通点をもっている。会場では、森田の「圓」を書いた5点と、その反復と差異に呼応するかのようにクイックターン・ストラクチャーを変奏した大山の新作5点が展示される。

 キュレーションを務める山峰は東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターにて、キュレーターとして勤務したのち、ANB Tokyoの設立とディレクションを手掛ける。その後、文化/アート関連事業の企画やコンサルを行う株式会社NYAWを設立。主な展覧会に、「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」、「霧の抵抗 中谷芙二子」(水戸芸術館)や「The world began without the human race and it will end without it.」(国立台湾美術館)など。また、avexが主催するアートフェスティバル「Meet Your Art Festival “NEW SOIL”」、文化庁とサマーソニックの共同プロジェクトMusic Loves Art in Summer Sonic 2022、森山未來と共同キュレーションしたKOBE Re:Public Art Projectなどのほか、雑誌やテレビなどのアート番組や特集の監修なども行ってきた。

 以下に、本展に際しての山峰のステートメントの一部を抜粋する。

 それぞれの作家は解体された言語体系を用いて、再構成しながら作家固有の言語体系を作り上げていく。そしてまたそれは作家の表現の中で反復されていくことで、共通言語としての強度を築いていく。こうしたそれぞれのスフィア(圏域)の重なりから、本展を『反復の圏域 -Repetitive Sphere-』と名付けることとした。