EXHIBITIONS

イミグレーション・ミュージアム・東京 多国籍美術展

わたしたちはみえている - 日本に暮らす海外ルーツの人びと -

北千住 BUoY、仲町の家
2021.12.11 - 12.26

「IMMねいばーず」によるリサーチの様子

高山明 バベル – 都市とその塔 2016 東京藝術大学千住キャンパス(2020)での展示風景

Cedric Rolando – Neoyume #東京の決まり文句-1:14 銭湯 2020

北千住 BUoY(銭湯の名残がある地下スペース)

仲町の家

 多文化社会をテーマにした多国籍美術展「わたしたちはみえている - 日本に暮らす海外ルーツの人びと -」が北千住 BUoY、文化サロン・仲町の家の2会場で開催されている。本展は「イミグレーション・ミュージアム・東京(IMM 東京)」の活動約10年間の集大成として「作品展」「公募展」「活動紹介展」の3つを展開し、日本の国際化について多角的に紹介する。

 IMM 東京は、東京・足立区を拠点に、音をテーマにしたアートプロジェクトを展開する「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」のプログラムのひとつ。地域に居住する外国人と市民が現代美術の手法を用いて交流し、そのコミュニケーションの蓄積を作品としてアーカイヴ化しながら、ミュージアムをつくることを目指す取り組みだ。ミュージアムと謳いながら特定の拠点をもたない独自のコンセプトで、「移民」のように足立区のいたる場所を転々としながら活動を続けている。

 アートを通じて、日本に暮らす海外にルーツをもつ人たちと出会うきっかけをつくってきたIMM 東京。本展は、活動を始めて以来掲げてきた「適応」「保持」「融合」というキーワードを、ホストとゲストアーティストたちの「作品展」、海外にルーツをもつ表現者たちによる「公募展」、多文化社会に取り組む団体の「活動紹介展」という3つのアプローチでひも解く。

「作品展」にはIMM 東京主宰であり、美術家の岩井成昭とともに、岩根愛、高山明、李晶玉が参加。ハワイにおける日系文化に注視し、移民を通じたハワイと福島の関わりをテーマに制作を続ける岩根、既存の演劇の枠組を超え、実際の都市を使ったインスタレーションやツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなどを世界各地で行う高山、在日朝鮮人3世という立場から、国家や民族に対する横断的な視点を足がかりに制作を展開する李。3人のアーティストたちが、現代日本における「移住と移民・多文化社会」をはどのように見つめ、作品を制作しているのか、それぞれのアプローチに迫る。

「公募展」では、海外にルーツをもつ表現者たちから募集した作品を展示。日々の生活のなかでつくられた手芸品や、普段の暮らしを映したスナップ写真、自国文化と日本文化を混ぜ合わせた芸術表現など、日常の感性や思考が垣間見える作品が並ぶ。

 そして「活動紹介展」では、国内で多文化社会の在りようを探る14の団体を迎え、それぞれの願う風景を映し出そうと活動を続ける様々な団体を、アーティストユニットのL PACK.による空間デザインのもとで紹介する。

 参加団体は、一般社団法人kuriya、イミグラジオ~アーツ前橋多文化放送局~、カナガワビエンナーレ国際児童画展、公益財団法人可児市文化芸術振興財団、公益財団法人国際文化フォーラム、THE アート・プロジェクト多文化読み聞かせ隊、東京外国語大学 多言語多文化共生センター、東京で(国)境をこえる、特定非営利活動法人アデイアベバ・エチオピア協会、特定非営利活動法人多文化共生リソースセンター東海、特定非営利活動法人ダンスボックス、マルパ(MULPA)、みえ市民活動ボランティアセンター、武蔵野美術大学・カシオ計算機株式会社(50音順)。

 さらに本展の会期中には、「市民リサーチャー・IMMねいばーずによるリサーチ成果展」として、多文化社会に関心のある学生や社会人、アーティスト活動をしている留学生など、多世代のメンバーからなる「IMMねいばーず」がテーマ展を開催。これまで定期的に行ってきた議論やフィールドワークを通じ、多文化社会について考えてきた成果を発表する場であり、私たちの身の回りで複雑に絡み合う「滲み出る多文化」と「食」というテーマを掘り下げる。

 母国を離れ日本の地で暮らす人たちは、日々の生活のなかでどのように他国の文化に「適応」し、そのなかで自らの文化を「保持」し、さらには「融合」しているのか。今回の多国籍美術展に寄せ、ディレクションを手がけた岩井成昭(美術家、IMM 東京主宰) は次のコメントを出している。

「東京で開催されたオリンピック・パラリンピック終了後も、COVID-19に行動を限定される生活が続いています。同様に、国内に280万人以上存在する在留外国人の生活にも、私たち以上に大きな負荷がかかっています。オリンピックは彼ら/彼女らの生活に想いを馳せる機会にはなりませんでした。しかし、私たちが彼らを想うイマジネーションが失われたわけではありません。この時代にこそ彼らに関心を向けること、そして彼らからの発信を紹介することが、イミグレーション・ミュージアム・東京(IMM 東京)にできることだと思います」。